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ひとこと:護衛艦「さわぎり」いじめ自殺訴訟で遺族が逆転勝訴

 海上自衛隊の護衛艦乗組員だった海上自衛隊の男性隊員が1999年、艦内で自殺したのは上官のいじめが原因だったとして、遺族が国に損害賠償を求めた訴訟で、福岡高裁が25日、請求を棄却した一審判決を見直し、350万円の支払いを命じる逆転判決を言い渡しました。直接「いじめ」という言葉で不法行為を認定しているわけではないようですが、上官に指導の域を超えた侮蔑的な言動があり、これによるストレスが原因のうつ病で自殺したと認定したようです。遺族側の逆転勝訴と言っていいと思います。共同通信の記事を引用します。

海自3曹自殺で賠償命令 国に350万、福岡高裁
 海上自衛隊佐世保基地(長崎県佐世保市)の護衛艦さわぎりの艦内で1999年、男性3等海曹=当時(21)=が自殺したのは上司のいじめが原因として、宮崎市の両親が国に2000万円の賠償などを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は25日、請求を棄却した1審長崎地裁佐世保支部判決を変更、350万円の支払いを命じた。
 判決理由で牧弘二裁判長は「3曹はうつ病が原因で自殺したと認められ、その原因は上司の侮辱的言動によるストレス」と認定。「上司の言動は3曹をひぼうし、心理的負荷を過度に蓄積させるような内容で、指導の域を超える違法なものだ」と指摘し、自殺と因果関係があると判断、国の安全配慮義務違反を認めた。

 判決後に記者会見した原告遺族は「再発防止の第一歩は、国が上告せずに判決を受け入れることだ」と指摘しました。再び共同通信の記事を引用します。

「自衛官の人権に配慮を」 侮辱的言動の認定で両親
 海上自衛隊佐世保基地(長崎県佐世保市)の護衛艦さわぎりの艦内で男性3等海曹=当時(21)=が自殺した原因を上司の侮辱的言動と認定し、国に賠償を命じた福岡高裁判決を受けて、宮崎市に住む両親が25日午後、福岡市内で記者会見し「判決を機に、少しでも自衛官の人権に目を向けてほしい」と訴えた。
 3曹の父親は「画期的な判決をいただいた」と安堵の表情を見せ、「自殺を考えたり悩んだりしている自衛官は、ほかにもいるはずだ。再発防止の第一歩は、国が上告せずに判決を受け入れることだ」と指摘した。
 
 この「さわぎり」自殺訴訟は、以前のエントリで紹介したジャーナリスト三宅勝久さんの著書「自衛隊員が死んでいく」にもレポートが掲載されています。護衛艦乗組員の自殺をめぐる訴訟はほかにもあり、航空自衛隊では女性自衛官へのセクシャルハラスメント、退職強要をめぐる訴訟も提起されていることも紹介されています。 
 常に憲法9条との関係が論議になる自衛隊ですが、憲法との関わりでのありように様々な意見があることはひとまず置くとして、「組織と個人」の観点から考えるとき、わたしは防衛省・自衛隊がメンツにこだわることなく、一人の若い自衛官が自ら命を絶った事実に率直に向き合ってほしいと思います。原因が上官のパワーハラスメントとも呼べる言動にあったと司法が認定したことの重みは相当なものです。上官の個人的資質に問題を矮小化させることなく、組織として隊員個々人をどう守っていくのかを考えてほしいと思います。
by news-worker2 | 2008-08-26 02:52 | 憲法