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イラク自衛隊撤収と名古屋高裁判決をめぐる「その後」

 少し時間がたってしまいましたが、イラクへの自衛隊派遣をめぐって政府は9月11日、航空自衛隊の派遣部隊を年内にも撤収させる方針を正式に表明しました。それまでもマスメディアの報道などで伝えられていたことであり、撤収方針それ自体には大きな驚きはありませんでしたが、米英軍のイラク侵攻につながる2001年の米中枢同時テロからちょうど7年に当たる日、しかも自民党総裁選の真っ只中での正式表明には、わたしは現政権の意図的な思惑を感じずにはいられません。マスメディアの報道も一様に指摘していますが、名古屋高裁がことし4月17日、航空自衛隊の物資輸送活動を憲法9条違反などとする判断を示しました。そうしたこともあって、イラクへの自衛隊派遣継続を掲げていては自民党総裁選後に予想される衆院選に勝てない、と政権・与党が判断したと考えても、うがち過ぎではないだろうと思います。
 自衛隊の撤収自体には、わたしは個人的な考えとして異論はありません。問題は、派遣部隊の活動をめぐって、政府の具体的な情報開示が依然としてないことだと考えています。
 名古屋高裁判決は、自衛隊の空輸先に含まれているバグダッドが「戦闘地域」であること、その戦闘地域で戦闘に従事する武装兵員をも空輸していることを認定し、「違憲」判断を導きました。しかし、判決が確定して以降、今に至るまでも政府・防衛省は具体的にバグダッドへ何を運んだのか、情報開示をしていません。政府は様々なレベルで「違憲」への不快感を表明しましたが、本来ならば、情報を開示し是非を有権者の判断に委ねるのが民主主義のありようではないかと思います。3権分立の観点からみて、司法の指摘を行政が黙殺している現状で、では何が必要なのか。わたしは、その一つとして、自衛隊が実際に運んだもの、運んでいるものは何なのかを独自に検証して報道し、政府に情報公開を迫っていくジャーナリズムがあると思います。多大な困難はあろうとも、新聞をはじめマスメディアの組織ジャーナリズムがそれを成し遂げてこそ、権力の監視役に足りうるのだと思います。

 名古屋高裁判決の意味を広く社会に広めていこうと、訴訟の原告側弁護団が各地で報告会を開いていることを最近知りました。8月末現在で既に150回を超えたそうです。
 「自衛隊イラク派兵違憲判決~その後」(弁護団のホームページ)

 この取り組みを知って「訴訟は判決が確定したら終わり、ではない」ということに、あらためて気付かされました。訴訟を起こし、判決が出たらそれを社会に知らせてゆく、そのこと自体がひとつの「運動」なのだと思います。権力側の動向を情報として発信するのと同じように、そうした運動をも紹介していくこともマスメディアのジャーナリズムの責務だろうと考えています。

 イラクへの自衛隊派遣と名古屋高裁判決に関連したわたしの過去エントリを以下にまとめておきます(新着順です)。

近況:「軍事報道と表現の自由」の講義が終わりました
福島元判事の東京新聞インタビュー記事~憲法記念日と新聞、マスメディア
自衛隊イラク派遣の違憲判断が確定
名古屋高裁判決についての航空幕僚長発言に感じる危うさ
だれにも戦争協力拒否権がある~名古屋高裁の空自イラク派遣「違憲」判断に思うこと
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by news-worker2 | 2008-09-15 10:45 | 憲法