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〝集団暴行〟を否定できず~海自3曹死亡事件の中間報告とマスメディア

 以前のエントリー(暴力の矛先を身内に向け、自衛隊は何を守るのか~内部告発の受け皿へマスメディアは奮起のとき )で取り上げた海上自衛隊特殊部隊「特別警備隊」の隊員養成課程で起きた3等海曹死亡事件で、防衛省が22日、海自調査委員会の中間報告を公表しました。養成課程を2日後にやめることが決まっていながら、送別行事として15人を相手に連続格闘が行われていたことに対し、中間報告は「必要性は認めがたい」としています。しかし「連続格闘がなぜ行われたのか」との最大の疑問点に納得できる説明はなく、集団暴行ではないのかとの疑いは防衛省も否定することができない、とわたしは受け止めています。一方で、「中間報告」と位置付け、調査を継続するとしながらも、今後の調査項目の柱に教官や隊員の格闘技経験や適性、訓練としての妥当性を強調するなど、3曹の死亡を「事故」として決着させたい意図が透けて見えると感じています。

 *中間報告の全文PDFファイルが防衛省のホームページにアップされています。

 今回の事件では、自衛隊内の警察組織である警務隊も捜査中とされていますが、同じ自衛隊の中で、どこまで真相に迫れるかを疑問視する指摘もあります。これも以前のエントリー(ひとこと:護衛艦「さわぎり」訴訟の遺族勝訴判決が確定)で取り上げた1999年の護衛艦さわぎり乗組員の3曹の自殺では、9年後の今年、3曹が上司の侮辱的言動を苦にしていたことがようやく司法によって認定され、判決が確定ましたが、これは逆に言えば、遺族が裁判に訴えるところまでやらなければ、真相はうやむやのままにされていたかもしれないことを示しています。しかも、逆転勝訴判決が確定した後も防衛省からの直接謝罪はなく、両親が上京して防衛省に出向いた23日、応対した人事教育長がようやく「申し訳なく思います」と口にしました。共同通信の記事を引用します。
 海上自衛隊佐世保基地(長崎県)の護衛艦さわぎりの艦内で1999年に3等海曹=当時(21)=が自殺した原因を「上司の侮辱的言動によるストレス」と認め、国に賠償を命じた福岡高裁判決が確定したのを受け、防衛省は23日、3曹の両親に初めて謝罪した。
 同日午後、宮崎市在住の両親が同省を訪れ、再発防止の徹底を申し入れた際、応対した渡部厚人事教育局長が「かけがえのないご子息を亡くし、申し訳なく思います」と謝罪した。

 まるで「東京まで来たんだったら謝ってやろうか」と言わんばかりの対応だと思います。

 理不尽な連続格闘の末に命を落とした3曹の事件で、不透明な決着を許さないためには、自衛隊員個々の良心に行き場を確保し、内部告発が生かされる環境が必要だと思います。マスメディアにとっても、このようなケースこそ組織ジャーナリズムの持ち味を十分に発揮し、内部告発の受け皿たり得るように奮起しなければなりません。存在意義が問われている、と言ってもいいと思います。
 中間報告を報じた新聞各紙の扱いは、在京大手紙はおおむね社会面を中心に本記のみの比較的、地味な扱いでした。しかし、事件現場となった広島県の地元紙の中国新聞は、一面トップに共同通信配信の記事を5段見出しで大きく据え、社会面には共同通信記者の解説記事、連載企画「病める自衛隊」、中間報告要旨を掲載しました。亡くなった3曹の出身地の愛媛新聞も、共同通信配信記事を一面トップに据えています。
 自衛隊をめぐっては、存在自体に対して新聞ごとにスタンスは異なっていますが、3曹の死がいかなる理由をもっても正当化されないことに異論はないでしょう。だれが見ても納得できる形で真相が究明されるよう、マスメディアとしても取材を尽くし、繰り返し報ずべきです。
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by news-worker2 | 2008-10-24 03:01