ご訪問ありがとうございます。マスメディアの一角で働く美浦克教が「メディア」や「労働」を主なテーマに運営します。初めてお出での方はカテゴリ「管理人ごあいさつと自己紹介」をご覧ください。


by news-worker2
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

2008年 09月 28日 ( 2 )

 麻生内閣が発足してわずか5日、中山成彬国土交通相が28日、辞任しました。「成田空港反対派は『ごね得』」「日本は単一民族」「日教組の強いところは学力が低い」の発言3点セットに始まり、27日は日教組攻撃発言をエスカレートさせ「日本の教育のがん」「解体しなきゃいかん」「ぶっ壊せ」とまで。28日の辞任後の記者会見では、日教組に関する一連の発言だけは撤回しなかったと伝えられています。
 わたしは、中山氏の一連の発言をひとくくりに「失言」ととらえることに違和感があります。少なくとも日教組攻撃は、中山氏自身が意図的に、確信を持って表現を強めていきました。その内容たるや、失言どころではなく「問題発言」「暴言」などの表現でも収まらないくらい、多々問題を含んでいると思います。
 日教組(日本教職員組合)とは何なのかと言えば、合法的に組織されている教職員の労働組合です。労働組合は直接的に憲法28条の労働3権の規定で、国民の権利として明記されています。また21条には結社の自由も明記されています。
 仮に特定の結社、団体、労組の活動に自分の考えと相反する内容があったとして、それを批判するのは基本的に自由だと思います。それもまた表現の自由ですし、批判には反論で答え、そうやって言論の自由が社会に担保されることになります。しかし、自分の考えと相容れないからといって、相手の存在を認めないことは許されるはずもないことです。それでは民主主義は成り立ちません。
 中山氏の「日教組は解体が必要」「ぶっ壊す」などの数々の発言は、閣僚としてはもちろんのこと、国会議員として明らかに憲法遵守義務の一線を越えています。「失言」で済むレベルではなく、憲法、立憲政治に直接かかわる問題だと思います。深刻なのは、中山氏自身に、憲法をないがしろにし、民主主義を危うくする内容であることの自覚が全くうかがえないことです。自分で自分が何を言っているのか、その意味がよく分かっていないとしか思えません。

*追記(9月28日17時55分)
 時事通信が辞任後の中山氏の記者会見の一問一答をアップしました。記録の意味で、日教組攻撃発言にかかわる部分を一部引用します。
 -日教組発言を撤回しないと言ったが。
 政治家中山成彬としては撤回したという考えはない。
 -日教組に対する認識は。
 問題はごく一部の過激な分子。日教組の中にもまじめに授業に取り組んでいる先生もいるが、政治的に子どもたちを駄目にして日本を駄目にしようという闘争方針で活動している方々がいる。それが日本を駄目にしている。
(中略)
 -なぜそこまでこだわったのか。
 それほど重要な問題。なぜこんなゆがんだ教育が行われているかについて関心を引きたかった。(報道各社インタビューで)国交相の仕事は何かと質問を受け、安心安全に暮らせる日本をバトンタッチするんだと答えているうちに、そこに住む日本人をちゃんと育てないといけないという気持ちがますます強くなった。
 -日教組の問題を言って良かったか。
 もちろん良かったと思う。
 -大分の人たちはどう感じたと思うか。
 大分県を名指しで言ったのは申し訳ない。
 -昨日、宮崎でなぜああいう(日教組批判の)発言を。
 確信的にあえて申し上げた。

 「問題はごく一部の過激な分子」と言いながら、なぜ「まじめに授業に取り組んでいる先生もいる」組合を組織丸ごと解体し、ぶっ壊さなければならないのでしょうか。
[PR]
by news-worker2 | 2008-09-28 16:14 | 憲法
 毎日新聞の27日付朝刊(東京本社発行、最終版)に訂正とおわびの2つの記事が掲載されました。一つは小泉元首相の引退表明をめぐる飯島勲元秘書官のコメントの引用についての訂正。もう一つは英文サイト「毎日デイリーニューズ」のコラム「WaiWai」問題で、毎日側が記事を無断で利用、翻訳していた出版社、新聞社が32社に上っていたことの新たなおわび(サイトにもアップされています)です。2つの問題自体は異なる事柄ですが、新聞社のジャーナリズムの在り方からは、必ずしも相互に無関係ではないように思えます。
 飯島元秘書官の発言の引用を訂正した記事は、26日付朝刊の政治面(5面)に「存在感 神通力薄れ」「『支持』小池氏も総裁選惨敗」などの見出しとともに記者の署名入りで掲載されました。背景事情として、小泉元首相の政治的影響力が弱まっていたことを指摘する内容のいわゆる「サイド記事」です。関係部分を引用します。
 「小泉氏は(サプライズを生む)魔法のつえをなくしてしまった。次期衆院選で小泉氏が応援しても小泉チルドレンは負けるだろう」
 長く秘書として仕えた飯島勲元首相秘書官は、引退の報を聞くと周辺にこう語った。

 この記事について27日付朝刊の同じく5面に、発言していない言葉が掲載されたとして、飯島氏が毎日新聞社社長、政治部長、記者の3人を名誉棄損、信用棄損、業務妨害の疑いで警視庁に告訴状を提出したことを伝える記事とともに、「訂正」を掲載しています。引用します。
 26日朝刊で、小泉純一郎元首相の飯島勲元秘書官の話として「小泉氏は(サプライズを生む)魔法のつえをなくしてしまった。次期衆院選で小泉氏が応援しても小泉チルドレンが負けるだろう」とあるのは、飯島氏の数日前の話を誤って形で引用したものでした。飯島氏は、小泉元首相引退の報を聞いてこのようなコメントはしていません。この部分を取り消します。

 毎日新聞の訂正記事では、数日前ではあるものの発言自体はあったことになります。しかし、なぜ時期を間違えてしまったのかは定かではありません。気になるのは、発言自体の有無(時期はともかくとして)についての飯島氏の主張は、他の報道によれば必ずしも毎日新聞の説明と一致しないことです。例えば共同通信の記事では「飯島氏は『毎日新聞から(取材の)電話も受けていない。捏造だ』と発言を否定。週明けに損害賠償を請求する訴訟も起こすとしている。」とあります。
 発言は確かにあったが時期を間違えて引用してしまったのか、それとも発言自体が存在していないのか。後者だったとすると、次には毎日新聞が記事で「周辺にこう語った」と記述している「周辺」など毎日新聞の情報源の信ぴょう性が問題になります。飯島氏に対する毎日新聞記者の直接取材はなかったと推察されることも含めて、毎日新聞記者の取材は妥当だったのか、という問題です。
 毎日新聞本紙の取材と記事の掲載のありようという問題は、もう一つのおわび記事のWaiWai問題にも関係してくるのではないかと思います。
 毎日新聞はことし7月20日付朝刊に、WaiWai問題の検証記事を掲載しました(サイトにもアップされています)。その中には次のようなくだりがあります。
 毎日新聞本紙では、記者が書いた原稿はデスクが目を通し、事実関係や表現について筆者に細かく確認を取ったうえで出稿される。さらに、紙面に掲載されるまでには、記事の扱いや見出しを決める部署や校閲部門、当日の編集責任者など何重ものチェックを経る。しかし、「WaiWai」ではこうした綿密なチェックは行われていなかった。原典の雑誌記事との照合も行われず、ほとんどが外国人スタッフの間で完結していた。

 WaiWaiの不適切な記事とは異なり「何重ものチェック」を経ていた本紙の記事で、なぜ今回のような誤報が起きたのかは、つまるところWaiWai問題の再発防止策にも密接にかかわってくる、と言えるのではないでしょうか。毎日新聞社には、WaiWai問題でみせたように、飯島氏の発言引用問題でも誤報の経緯を検証し、読者に説明する真摯な対応を期待しています。

 WaiWai問題は何度かこのブログでも取り上げてきました。過去エントリをまとめておきます。(新着順)。
 外国人記者の「働かされ方」に問題はなかったか~毎日WaiWai問題検証で考えること
 ひとこと:英文毎日コラム問題で毎日新聞が内部調査結果を掲載
 ひとこと:英文毎日問題で7月中旬に調査結果公表
 趣の異なる新聞不祥事~英文毎日の不適切コラム問題
[PR]
by news-worker2 | 2008-09-28 02:59 | 新聞・マスメディア