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2008年 10月 05日 ( 2 )

d0140015_9355841.jpg 著者は元毎日新聞社会部記者。ネット社会をめぐる数々のリポートや発言は、いつも参考になります。最近では、毎日新聞の英文サイトWaiWai問題で、CNET‐Japan上のブログ「ジャーナリストの視点」の「毎日新聞社内で何が起きているのか(上)」「同(下)」多くのブックマークを集め、話題になっています。
 本書ではそのWaiWai問題の考察も含めて、ネット上に出現した新しい言論の公共圏が日本社会に引き起こしている変化を描いています。中でも、WaiWai問題はライブドア事件と郵政解散・総選挙があった2005年以来のエポックメイキングな出来事であるとの指摘には、あらためてうなずきました。実は本書をこの欄で取り上げる意図も、この点にあります。
 日本の新聞社各社も昨今はインターネット展開に躍起ですが、編集の現場(つまり新聞記者です)に限っては、とりわけ40-50代の幹部クラスは十分なネットリテラシーを身に着けているとは言いがたいのが実情だと感じています。そうした層にこそ、まず本書を手に取ってほしいと思います。既存メディアに対する数々の指摘は、恐らくいちいちが腹立たしいことでしょう。しかし、その腹立たしさをひとまずは抑え込んで読み進んでほしいと思います。読み終えた後も怒りは収まらないかもしれません。読後感は人それぞれかもしれませんが、あらためて新聞や新聞社のジャーナリズムの今日的な意義を考えるきっかけになれば、そういう人が1人でも増えれば、その分だけ新聞ジャーナリズムは存在の意義を強めることができるのではないか。わたしは本書の意義をそんな風に考えています。 
 
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by news-worker2 | 2008-10-05 13:38 | 読書
 以前のエントリ(近況:「軍事報道と表現の自由」の講義が終わりました)でも取り上げましたが、2005年5月に読売新聞が報じた中国潜水艦の事故の特ダネ記事をめぐり、読売新聞記者に情報を提供したとして、自衛隊の一等空佐が自衛隊法違反容疑で書類送検された問題に絡んで、大きな動きがありました。防衛省は10月2日、この1佐を懲戒免職処分としました。共同通信記事を引用します。
 南シナ海での中国潜水艦の事故をめぐる「防衛秘密」が防衛省から読売新聞記者に漏えいしたとされる事件で、同省は2日、自衛隊法(防衛秘密漏えい)違反容疑で書類送検された元情報本部課長の北住英樹1等空佐(50)=同本部総務部付=を、同日付で懲戒免職処分にしたと発表した。
 記者への情報提供を「漏えい」として、自衛官が懲戒免職となるのは初めて。書類送検を受けて捜査している東京地検が刑事処分を決める前に、同省が極めて厳しい処分に踏み切る異例の展開となった。背景には情報保全強化の流れがあり、取材を受ける公務員が萎縮(いしゅく)するなど「知る権利」「報道の自由」の制約につながる懸念がある。

 読売新聞東京本社は2日、編集主幹名で防衛省の処分を「遺憾」とする談話を発表しました。その中で今回の処分が「国民の知る権利にこたえる報道の役割を制約するおそれがある」と指摘する一方、読売新聞記者の取材は適正だったことも述べています。

 公権力が都合の悪いことを書かれたくなければ、方法は取材者への直接の弾圧に限りません。取材者の情報源、つまり情報の提供者を潰せば効果は同じです。「書かせない」だけではなく「書けない」状態に追い込めばいいのです。取材者に情報を内通すればどうなるか、見せしめを作れば、後に続く者はいなくなることが期待できます。
 情報提供者と取材者を同時に摘発すれば、「表現の自由」や「知る権利」への直接弾圧として激しい反発を受けるでしょう。しかし今回のように情報提供者だけを摘発した場合、処分を受けた情報提供者がその処分を受け入れてしまったら、処分が妥当かどうか、客観的な判断を仰ぐ場もありません。まさに今回の政府・防衛省の公式見解がそうなのですが「『表現の自由』や『知る権利』は尊重している。組織の規律の問題なのだ」との一見もっともらしい主張がまかり通ることになります。
 わたしが今回のケースでとりわけ問題だと考えるのは、軍事の分野での出来事である点です。

(続きます)
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by news-worker2 | 2008-10-05 01:11 | 表現の自由