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 賃金が生活保護水準を下回るような「ワーキングプア」や「偽装請負」、「名ばかり管理職」など、働き方、働かされ方をめぐる話題が最近は報道でも目につくようになっています。本書は、実例に基づいたその現場の実態のリポートです。同時に、労働者の権利や労働組合運動の意義についても深く考えさせられる1冊です。

 著者は労働事件を豊富に手掛けている弁護士。取り上げているのは8つの事例で、いずれも著者が実際に担当したケースばかりです。著者自身による内容の紹介(NPJ=News for the People in Japanより)を引用します。


 私がこれまで担当してきた事件を素材に、実践的に労働法の内容を解説すると共に、たたかうこと、労働組合への団結の重要性、それをてこに政治を変えることの重要性を書いた書籍です。
 名ばかり管理職と残業代、賃金の一方的切り下げ、パワハラ、解雇、雇い止め、派遣労働者の解雇、整理解雇、そして労働組合のたたかい。弁護士が関わる労働事件については、分野の多くを紹介できたのではないかなと思います。また、それらの事件に関わる法令については、ひととおりの説明を加えるのはもちろん、最新情報として、労働契約法、労働審判法の情報も盛り込みました。

 わたし自身が労働組合運動にかかわってきた経験から今も思うのは、「ワーキングプア」も「偽装請負」も、「名ばかり管理職」も、あるいはパワハラや理不尽な解雇、雇い止めにしても、働く者が無権利の状態に放置されていることにほかならないということです。働く者として当然に擁護されていなければならない権利がないがしろにされていることであり、著者はそうした状態も含めて「人が壊れてゆく」と表現しています。
 対使用者との関係では、労働者は圧倒的に弱い立場です。賃金や労働条件に不満や疑問があっても、一人では口にすることすらできません。そうすれば、たちまち仕事を失うことになりかねないからです。著者は法曹実務家として、法律の専門知識でもって、弱い立場の労働者の側に立ち、権利の擁護のために活動しています。本書はその記録です。
 一方で、弱い立場の労働者でも団結して声を合わせれば、使用者に対等の立場で対抗していくことができます。そこにこそ憲法28条が定める労働3権(団結権、交渉権、行動権)と労働組合の重要さがあると思います。憲法や労働諸法制が労働3権を保障していることは、労働組合それ自体が働く者の権利として保障されていることにほかなりません。一人では圧倒的に弱い立場にある労働者は、労働組合という権利を独力で手にすることもまた困難です。だからこそ、既存の労働組合が何をするのかが今日、問われているのだと思います。労働組合という「権利」を既に手にしている労働者が、未だその権利を手にできていない労働者と連帯し、権利を広め拡大していくことが、結局は自分たちの権利を守り抜くことにつながるのだと思います。
 労働組合が「権利」を口にするとき、往々にして「既得権にしがみつく利益団体」という批判を浴びます。今や「権利としての労働組合」の在り方を一から考え、模索し、行動すべきだと思います。企業内組合が企業内のサークル活動と化していないか、そんな反省に立つことが必要だと考えています。
  「名ばかり管理職」の問題にしても、「管理職」だから労働組合員ではありえない、ということに、今まであまりにも疑いを持たなすぎたのではないでしょうか。「管理職」と呼ばれる労働者としての労働組合運動が追求されていいと思います。本書を読んで、あらためてそんなことを強く感じました。
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by news-worker2 | 2008-09-11 02:00 | 読書
 以前のエントリで紹介した海上自衛隊の護衛艦「さわぎり」乗組員の自殺をめぐる訴訟で、上官に指導の域を超えた侮蔑的な言動があり、これによるストレスが原因のうつ病で自殺したと認定した福岡高裁判決が確定しました。共同通信の記事を引用します。
3曹自殺訴訟、国の敗訴が確定 防衛次官、上告断念を発表
 海上自衛隊佐世保基地(長崎県佐世保市)の護衛艦さわぎりで男性3等海曹=当時(21)=が自殺した原因を「上司の侮辱的言動によるストレス」と認め、国に350万円の賠償を命じた福岡高裁判決について、防衛省の増田好平事務次官は8日の記者会見で、上告しないことを正式に発表した。両親側逆転勝訴の高裁判決が確定。
 増田次官は「判決を検討した結果、憲法解釈の誤りなど上告理由に当たる事項はなかった。二度と起こらないよう隊員の身上を把握し再発防止に努めたい」と述べた。

 再発防止のためには、まず防衛省・自衛隊が、単に訴訟技術上の方便にとどまることなく、実態として指導の域を超えた上官の「侮蔑的言動」があったことを正面から認めることが必要です。ひとたび出航すればどこにも逃げ場がなく、しかも階級に律せられている海上勤務の自衛隊員が、どれだけ精神的に追い詰められていたかに思いを致し、真に実効的な対策が採られることを期待したいと思います。マスメディアも継続して防衛省・自衛隊の動向をフォローすべきだと思います。
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by news-worker2 | 2008-09-09 01:34 | 憲法
 福田首相が突然の退陣を表明した今月1日夜の記者会見で、最後に「首相の発言は他人事のように聞こえる」と質問した記者に「私は自分を客観的に見ることは出来るんです。あなたとは違うんです」と答えたことが、話題になっているようです。
 例えばJ-CASTニュースは「福田首相『あなたとは違う』発言 『流行語大賞候補』とネットで注目」と題して記事をアップしていますし、朝日新聞は3日付夕刊に関連記事を掲載しました。一部を引用します。
 福田首相は1日夜の辞任会見で「会見がひとごとのようだ」と記者から指摘され、「私は自分のことは客観的に見ることができるんです。あなたとは違うんです」と気色ばんだ。この発言を巡る是非は、インターネットでも沸騰。掲示板では関連スレッド(書き込み群)が乱立し、ブログでも無数に取り上げられた。早くも「今年の流行語大賞に」と“期待”する声もある。

 福田首相のこの答弁を肯定的にみるか、否定的にみるかは人それぞれでしょうが、この答弁のもとになった質問をしたのは、在京の大手マスメディアの政治部記者ではありませんでした。質問をした中国新聞東京支社の道面雅量記者の署名記事をここで紹介し、記録にとどめておきたいと思います。

【記者手帳】首相の辞任会見に思う
 「総理の会見は国民には『人ごと』のように聞こえる。この辞任会見も」。一日夜、福田康夫首相の辞任会見で、そんな質問をぶつけた。首相は「私は自分を客観的に見ることができる。あなたとは違う」と気色ばんだ。生意気な質問だという指摘を受けるかもしれないが、あえて聞いておきたかった。
 昨年十月、米民主党のオバマ上院議員が大統領候補指名を争う中、「米国は核兵器のない世界を追求する」と発言した。首相はどう感じたか、夕方の「ぶらさがり会見」で尋ねた。返答は次のようなものだった。
 「そりゃ、そういう世界が実現すれば、それにこしたことはないと思います。まあ、いずれにしてもですね、核兵器を保有する、その競争をするような世界では、あまりよくないと思いますけどね」。被爆国の首相の言葉としては、あまりに物足らなく感じた。
 福田首相は確かに自身の置かれた状況を客観視し、慎重に発言する人だと思う。しかし、それだけでは務まらないのが首相の重責だろう。国民に自身の明確な意思を伝える必要に常に迫られている。辞任会見を聞きながら過去の取材経験がよみがえり、どうしても聞かずにはおれなかった。


*追記(2008年9月6日午前9時)
 タイトルを「福田首相に『あなたとは違うんです』と言わしめた中国新聞記者」から変えました。広島の中国新聞にしても、長崎新聞にしても、〝被爆地の新聞〟で働いていることにこだわり続ける人たちがいることを、新聞労連の専従時代に知りました。道面記者は名実ともに〝被爆地の新聞記者〟だと思います。
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by news-worker2 | 2008-09-04 02:14 | 新聞・マスメディア