ご訪問ありがとうございます。マスメディアの一角で働く美浦克教が「メディア」や「労働」を主なテーマに運営します。初めてお出での方はカテゴリ「管理人ごあいさつと自己紹介」をご覧ください。


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 以前のエントリ(近況:「軍事報道と表現の自由」の講義が終わりました)でも取り上げましたが、2005年5月に読売新聞が報じた中国潜水艦の事故の特ダネ記事をめぐり、読売新聞記者に情報を提供したとして、自衛隊の一等空佐が自衛隊法違反容疑で書類送検された問題に絡んで、大きな動きがありました。防衛省は10月2日、この1佐を懲戒免職処分としました。共同通信記事を引用します。
 南シナ海での中国潜水艦の事故をめぐる「防衛秘密」が防衛省から読売新聞記者に漏えいしたとされる事件で、同省は2日、自衛隊法(防衛秘密漏えい)違反容疑で書類送検された元情報本部課長の北住英樹1等空佐(50)=同本部総務部付=を、同日付で懲戒免職処分にしたと発表した。
 記者への情報提供を「漏えい」として、自衛官が懲戒免職となるのは初めて。書類送検を受けて捜査している東京地検が刑事処分を決める前に、同省が極めて厳しい処分に踏み切る異例の展開となった。背景には情報保全強化の流れがあり、取材を受ける公務員が萎縮(いしゅく)するなど「知る権利」「報道の自由」の制約につながる懸念がある。

 読売新聞東京本社は2日、編集主幹名で防衛省の処分を「遺憾」とする談話を発表しました。その中で今回の処分が「国民の知る権利にこたえる報道の役割を制約するおそれがある」と指摘する一方、読売新聞記者の取材は適正だったことも述べています。

 公権力が都合の悪いことを書かれたくなければ、方法は取材者への直接の弾圧に限りません。取材者の情報源、つまり情報の提供者を潰せば効果は同じです。「書かせない」だけではなく「書けない」状態に追い込めばいいのです。取材者に情報を内通すればどうなるか、見せしめを作れば、後に続く者はいなくなることが期待できます。
 情報提供者と取材者を同時に摘発すれば、「表現の自由」や「知る権利」への直接弾圧として激しい反発を受けるでしょう。しかし今回のように情報提供者だけを摘発した場合、処分を受けた情報提供者がその処分を受け入れてしまったら、処分が妥当かどうか、客観的な判断を仰ぐ場もありません。まさに今回の政府・防衛省の公式見解がそうなのですが「『表現の自由』や『知る権利』は尊重している。組織の規律の問題なのだ」との一見もっともらしい主張がまかり通ることになります。
 わたしが今回のケースでとりわけ問題だと考えるのは、軍事の分野での出来事である点です。

(続きます)
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# by news-worker2 | 2008-10-05 01:11 | 表現の自由
 お知らせです。新聞労連や民放労連などマスメディア産業関連労組でつくる日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)と日本ジャーナリスト会議(JCJ)が共同で運営しているサイト「憲法メディアフォーラム」に、匿名座談会「女性がメディアで働く、ということは」がアップされました。
 2005年4月に運営がスタートしたこのサイトでは年に2回、新聞や放送の現場の記者、デスクらを招いた匿名座談会が大型コンテンツとして定着しています。6回目の今回は初めて出席者を女性に限定し、女性が働く職場としてのマスメディアを話し合っています。小見出しは以下の通りです。

▽仕事とプライベートの線引きは?
▽今も昔も「男マスコミ」
▽女性問題は女性にしかわからない?
▽正規・非正規と女性差別
▽女性が生き生きと働き続けられるために

 正社員の間にある男女間の不平等と、正社員、非正社員の間の不平等との二重の不平等の構図がある中で、女性差別も双方にまたがって二重の構造となっていることを職場の実情に即して指摘するなど、内容が濃い座談会です。一読をお奨めします。
 トップページからPDF(全13ページ)で読めます。
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# by news-worker2 | 2008-10-04 03:20 | 新聞・マスメディア
 弁護士でもある橋下徹大阪府知事が知事就任前、山口県光市の母子殺害事件の差し戻し審被告弁護団について、テレビ番組で「主張内容は荒唐無稽で許されない」などとして、弁護団への懲戒請求を呼び掛けていました。弁護団が橋下氏に賠償を求めていた訴訟の判決が2日、広島地裁であり、橋下氏の発言は名誉棄損に当たるとして800万円の賠償を命じました。
 *判決要旨、記者団に対する橋下氏の一問一答=いずれも共同通信
 請求額は1200万円でしたが、実質的に橋下氏の完敗です。判決は、橋下氏が弁護士として法的根拠がないことを知っていながら、あえて請求を呼び掛けたと認定しました。 判決は刑事弁護の一般論にも通じる数々の判断を示しています。「弁護士の使命は少数派の基本的人権の保護にあり、弁護士の活動が多数派の意向に沿わない場合もあり得る」「刑事弁護人の役割は刑事被告人の基本的人権の擁護であり、多数の人から批判されたことをもって懲戒されることはあり得ない」「(主張が)荒唐無稽だったとしても刑事被告人の意向に沿った主張をする以上、弁護士の品位を損なう非行とは到底言えない」などです。報道で判決要旨を読んだ限りの感想ですが、わたしは裁判官が「橋下氏が法律の専門家でありながら」という点を重視し、だからこそ悪質性が一層高いと判断した、との印象を持っています。
 訴訟では、橋下氏を出演させたテレビ局は係争の当事者になっておらず、従って判決もテレビ局については言及がないようですが、刑事裁判の原理原則、少数意見の尊重に自覚があれば、法律の専門家であってもゲストとして招く以上は人選や発言内容、発言の取り上げ方に留意すべきだったのではないかと思います。
 判決が示した刑事裁判についての数々の指摘は、裁判をどう報じるかという点で、あるいは裁判報道に限らず少数意見の尊重という観点からも、マスメディアの在り方にも深くかかわることだと思います。特に「弁護士の使命は少数派の基本的人権の保護にあり、弁護士の活動が多数派の意向に沿わない場合もあり得る」との指摘は、マスメディアにもそのままではないにせよ、相当程度当てはまるのではないかと思います。社会には多様な意見があること、少数意見は少数であるが故になおさら尊重されなければならないことをマスメディアは忘れてはならないと思いますし、わたし自身もマスメディアで働く一人として、あらためて肝に銘じています。

 光市の事件の差し戻し控訴審とテレビについては、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会が今年4月、各局の番組の検証結果を公表しています。

委員会決定第04号 光市母子殺害事件の差戻控訴審に関する放送についての意見
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# by news-worker2 | 2008-10-03 03:31 | 憲法
 4月から務めていた明治学院大学社会学部の非常勤講師は、9月いっぱいで名実ともに終了しました。そのタイミングに合わせてでしょうか、きょう(10月1日)、授業の中で実施されていた「授業評価調査」の結果が郵送で届きました。
 これは、受講している学生にアンケート形式で授業に対する評価を提出してもらい、結果を授業の改善、向上に役立てるのが狙いで、いわば学生から教員への「通信簿」です。今ではだいたいどこの大学でも実施しているようです。
 設問は18あり5段階評価。通信簿を受け取るのは何十年ぶりでしょうか。少しどきまぎしましたが、うれしかったのは「この授業のテーマと内容についての関心は高まりましたか」「この授業から新しい知識が得られましたか」の2つの設問に、9割以上の学生が最高の「5」を付けてくれたことです。
 機会があれば、ぜひまた講師職にチャレンジしたいと思います。
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# by news-worker2 | 2008-10-02 00:55 | 非常勤講師
 ことし9月9日に厚生労働省が、いわゆる「名ばかり管理職」をめぐって出した通達「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」が労働界などで波紋を広げているようです。9月30日には連合(日本労働組合総連合会)が、厚労省に対し、要請活動を行いました。新通達が一人歩きした場合、通達に記載されている判断要素さえクリアすれば、労働基準法上の「管理監督者」として扱って構わないとの誤解が広がりかねない、との懸念に基づくもののようです。
 企業社会の実態として「管理職=管理監督者」との運用がまかり通り、さらに「管理職=非組合員」となっているケースが多いようですが、一方で「管理監督者」もまた「労働者」であり、経営者と「一体的な立場」の程度にもよるでしょうが、「管理監督者」が加入する、加入できる労働組合があっても一向に差し支えないと思います。このあたりのことは、このブログでもいずれまた書いていきたいと思います。
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# by news-worker2 | 2008-10-01 02:18 | 労働運動
 麻生内閣が発足してわずか5日、中山成彬国土交通相が28日、辞任しました。「成田空港反対派は『ごね得』」「日本は単一民族」「日教組の強いところは学力が低い」の発言3点セットに始まり、27日は日教組攻撃発言をエスカレートさせ「日本の教育のがん」「解体しなきゃいかん」「ぶっ壊せ」とまで。28日の辞任後の記者会見では、日教組に関する一連の発言だけは撤回しなかったと伝えられています。
 わたしは、中山氏の一連の発言をひとくくりに「失言」ととらえることに違和感があります。少なくとも日教組攻撃は、中山氏自身が意図的に、確信を持って表現を強めていきました。その内容たるや、失言どころではなく「問題発言」「暴言」などの表現でも収まらないくらい、多々問題を含んでいると思います。
 日教組(日本教職員組合)とは何なのかと言えば、合法的に組織されている教職員の労働組合です。労働組合は直接的に憲法28条の労働3権の規定で、国民の権利として明記されています。また21条には結社の自由も明記されています。
 仮に特定の結社、団体、労組の活動に自分の考えと相反する内容があったとして、それを批判するのは基本的に自由だと思います。それもまた表現の自由ですし、批判には反論で答え、そうやって言論の自由が社会に担保されることになります。しかし、自分の考えと相容れないからといって、相手の存在を認めないことは許されるはずもないことです。それでは民主主義は成り立ちません。
 中山氏の「日教組は解体が必要」「ぶっ壊す」などの数々の発言は、閣僚としてはもちろんのこと、国会議員として明らかに憲法遵守義務の一線を越えています。「失言」で済むレベルではなく、憲法、立憲政治に直接かかわる問題だと思います。深刻なのは、中山氏自身に、憲法をないがしろにし、民主主義を危うくする内容であることの自覚が全くうかがえないことです。自分で自分が何を言っているのか、その意味がよく分かっていないとしか思えません。

*追記(9月28日17時55分)
 時事通信が辞任後の中山氏の記者会見の一問一答をアップしました。記録の意味で、日教組攻撃発言にかかわる部分を一部引用します。
 -日教組発言を撤回しないと言ったが。
 政治家中山成彬としては撤回したという考えはない。
 -日教組に対する認識は。
 問題はごく一部の過激な分子。日教組の中にもまじめに授業に取り組んでいる先生もいるが、政治的に子どもたちを駄目にして日本を駄目にしようという闘争方針で活動している方々がいる。それが日本を駄目にしている。
(中略)
 -なぜそこまでこだわったのか。
 それほど重要な問題。なぜこんなゆがんだ教育が行われているかについて関心を引きたかった。(報道各社インタビューで)国交相の仕事は何かと質問を受け、安心安全に暮らせる日本をバトンタッチするんだと答えているうちに、そこに住む日本人をちゃんと育てないといけないという気持ちがますます強くなった。
 -日教組の問題を言って良かったか。
 もちろん良かったと思う。
 -大分の人たちはどう感じたと思うか。
 大分県を名指しで言ったのは申し訳ない。
 -昨日、宮崎でなぜああいう(日教組批判の)発言を。
 確信的にあえて申し上げた。

 「問題はごく一部の過激な分子」と言いながら、なぜ「まじめに授業に取り組んでいる先生もいる」組合を組織丸ごと解体し、ぶっ壊さなければならないのでしょうか。
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# by news-worker2 | 2008-09-28 16:14 | 憲法
 毎日新聞の27日付朝刊(東京本社発行、最終版)に訂正とおわびの2つの記事が掲載されました。一つは小泉元首相の引退表明をめぐる飯島勲元秘書官のコメントの引用についての訂正。もう一つは英文サイト「毎日デイリーニューズ」のコラム「WaiWai」問題で、毎日側が記事を無断で利用、翻訳していた出版社、新聞社が32社に上っていたことの新たなおわび(サイトにもアップされています)です。2つの問題自体は異なる事柄ですが、新聞社のジャーナリズムの在り方からは、必ずしも相互に無関係ではないように思えます。
 飯島元秘書官の発言の引用を訂正した記事は、26日付朝刊の政治面(5面)に「存在感 神通力薄れ」「『支持』小池氏も総裁選惨敗」などの見出しとともに記者の署名入りで掲載されました。背景事情として、小泉元首相の政治的影響力が弱まっていたことを指摘する内容のいわゆる「サイド記事」です。関係部分を引用します。
 「小泉氏は(サプライズを生む)魔法のつえをなくしてしまった。次期衆院選で小泉氏が応援しても小泉チルドレンは負けるだろう」
 長く秘書として仕えた飯島勲元首相秘書官は、引退の報を聞くと周辺にこう語った。

 この記事について27日付朝刊の同じく5面に、発言していない言葉が掲載されたとして、飯島氏が毎日新聞社社長、政治部長、記者の3人を名誉棄損、信用棄損、業務妨害の疑いで警視庁に告訴状を提出したことを伝える記事とともに、「訂正」を掲載しています。引用します。
 26日朝刊で、小泉純一郎元首相の飯島勲元秘書官の話として「小泉氏は(サプライズを生む)魔法のつえをなくしてしまった。次期衆院選で小泉氏が応援しても小泉チルドレンが負けるだろう」とあるのは、飯島氏の数日前の話を誤って形で引用したものでした。飯島氏は、小泉元首相引退の報を聞いてこのようなコメントはしていません。この部分を取り消します。

 毎日新聞の訂正記事では、数日前ではあるものの発言自体はあったことになります。しかし、なぜ時期を間違えてしまったのかは定かではありません。気になるのは、発言自体の有無(時期はともかくとして)についての飯島氏の主張は、他の報道によれば必ずしも毎日新聞の説明と一致しないことです。例えば共同通信の記事では「飯島氏は『毎日新聞から(取材の)電話も受けていない。捏造だ』と発言を否定。週明けに損害賠償を請求する訴訟も起こすとしている。」とあります。
 発言は確かにあったが時期を間違えて引用してしまったのか、それとも発言自体が存在していないのか。後者だったとすると、次には毎日新聞が記事で「周辺にこう語った」と記述している「周辺」など毎日新聞の情報源の信ぴょう性が問題になります。飯島氏に対する毎日新聞記者の直接取材はなかったと推察されることも含めて、毎日新聞記者の取材は妥当だったのか、という問題です。
 毎日新聞本紙の取材と記事の掲載のありようという問題は、もう一つのおわび記事のWaiWai問題にも関係してくるのではないかと思います。
 毎日新聞はことし7月20日付朝刊に、WaiWai問題の検証記事を掲載しました(サイトにもアップされています)。その中には次のようなくだりがあります。
 毎日新聞本紙では、記者が書いた原稿はデスクが目を通し、事実関係や表現について筆者に細かく確認を取ったうえで出稿される。さらに、紙面に掲載されるまでには、記事の扱いや見出しを決める部署や校閲部門、当日の編集責任者など何重ものチェックを経る。しかし、「WaiWai」ではこうした綿密なチェックは行われていなかった。原典の雑誌記事との照合も行われず、ほとんどが外国人スタッフの間で完結していた。

 WaiWaiの不適切な記事とは異なり「何重ものチェック」を経ていた本紙の記事で、なぜ今回のような誤報が起きたのかは、つまるところWaiWai問題の再発防止策にも密接にかかわってくる、と言えるのではないでしょうか。毎日新聞社には、WaiWai問題でみせたように、飯島氏の発言引用問題でも誤報の経緯を検証し、読者に説明する真摯な対応を期待しています。

 WaiWai問題は何度かこのブログでも取り上げてきました。過去エントリをまとめておきます。(新着順)。
 外国人記者の「働かされ方」に問題はなかったか~毎日WaiWai問題検証で考えること
 ひとこと:英文毎日コラム問題で毎日新聞が内部調査結果を掲載
 ひとこと:英文毎日問題で7月中旬に調査結果公表
 趣の異なる新聞不祥事~英文毎日の不適切コラム問題
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# by news-worker2 | 2008-09-28 02:59 | 新聞・マスメディア
 きのう(25日)は前日の麻生太郎内閣の発足に続いて、米原子力空母ジョージ・ワシントンの横須賀入港など大きなニュースがありました。そして夜になって、小泉純一郎元首相が衆院議員引退の意向を後援会に伝えた、とのニュースが飛び込んできました。
 5年間にわたった小泉政治には様々な側面があります。構造改革、郵政民営化、格差社会。ハンセン病問題の決着、対米協調外交と在日米軍再編、イラク戦争支持と自衛隊のイラク派遣、靖国神社参拝と対中国関係の悪化、訪朝・拉致問題などなど。ワンワード・ポリティクス、小泉劇場、小泉チルドレンなどのキーワードもありました。5年間の功罪の評価は人それぞれだと思います。
 わたし自身の自分史を重ね合わせて振り返ると、小泉政権が誕生した2001年、わたしは当時所属していた単組(単位組合)で最初の労働組合専従を初めて経験しました。になりました。執行部経験としては2度目でした。1年後に復職し、さらに2年を置いた2004年、2回目の専従として新聞労連委員長を2年間務めました。再び復職した2006年に、小泉政権も安倍晋三政権に替わりました。小泉政治の5年間を、わたし自身は労働運動に身を置きながら過ごしたと言っていいと思います。
 いくつか忘れることができない個人的な内面の思いがあります。一つは2005年の郵政民営化選挙で、小泉首相(当時)が言い放った「労働組合は抵抗勢力」という言葉です。自分と異なった意見は認めない政治姿勢だと感じました。しかし、それゆえに明瞭で歯切れのよさが際立つ物言いでもあったのかもしれません。選挙の結果は自民党の大勝。一方的にマイナスイメージのレッテルを張られながら、しかし労働運動の側の反論も何も社会に届かなかった、そんなやるせなく切ない心情を何ともしようがありませんでした。
 労働組合が「権利」を口にするとき、外部の人たちがイメージしていたのは「既得権益」だったのだと思います。そうではなく、労働組合をそれ自体「権利」として輝かせるためには、まずすべての働く人たちが、正社員であろうと非正規雇用であろうと、等しくその「権利」を手にできるようにしなければならないと考えました。そのために、日常の運動の質が問われていると感じました。
 小泉元首相の憲法観には、何度か心底怒りを覚えました。2003年12月、自衛隊をイラクに派遣することを決めるに当たって、小泉首相(当時)は憲法の前文の一部だけを引用しました。自民党内にも批判があった靖国神社参拝に際しては、内心の自由を持ち出し、政教分離に抵触しないと強弁しました。日本国憲法を総体として読めば、およそそのような解釈など不可能なはずでした。それでいて、改憲には熱意がないように見えましたが、今から思えば、だからこそ特異な憲法観が政治的な失点につながらなかったのかもしれないと思います。
 5年間の小泉政治がわたしたちの社会に何を残したのか、その評価が定まるにはまだ時間がかかるのかもしれません。明日(26日)の朝刊各紙はそれぞれに小泉政治の功罪を様々な角度から検証し、論じていることでしょう。なるべくじっくり読み比べてみようと思います。

*追記(9月26日午前11時半)
 誤読の恐れのある表現を一部手直ししました。
 タイトルを「小泉元首相が引退へ」から変えました。
 
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# by news-worker2 | 2008-09-26 03:27 | 労働運動
 少し時間がたってしまいましたが、新聞ジャーナリズムをめぐって前例を思い起こすことができないくらい異例で、なおかつ社会の表現の自由を考える上でも重要な問題だと考えていることですので、記録に残す意味も含めて、このエントリを書くことにしました。
 小泉純一郎首相の元で郵政民営化が最大争点になった2005年9月の衆院選の投開票日前日に、東京都内の警視庁職員官舎の集合郵便ポストに共産党の機関紙「しんぶん赤旗」を配布していた厚生労働省の元課長補佐が、住居侵入の現行犯で逮捕されました。住居侵入容疑については不起訴でしたが、国家公務員の政治的行為の制限を定めた国家公務員法に違反するとして、国家公務員法違反罪で起訴されました。東京地裁は9月19日、求刑通り罰金10万円の判決を言い渡しました。
 前例のないほど異例、というのはこの判決の翌20日付け朝刊の新聞各紙の報道ぶりです。東京都内の最終版を調べた限りでは、次のようでした。

【朝日】本記・第2社会面3段見出し
      「元厚労省職員に罰金刑」「東京地裁 赤旗の配布『政治的』」
    被告の記者会見・第2社会面2段見出し
      「『私生活なのに』元職員」
    社説
      「政党紙配布 公務員への刑罰どこまで」
【毎日】本記・社会面準トップ4段見出し
      「元厚労課長補佐 有罪」「赤旗配布に罰金10万円」「東京地裁判決」
    解説・社会面3段見出し
      「34年前の判例 またも踏襲」
    被告側の記者会見・社会面1段見出し
      「『事実見てない』『中味薄っぺら』」「被告ら会見」
【読売】記事の掲載なし
【日経】本記・第2社会面1段見出し(全文12行)
      「官舎に『赤旗』配布で有罪判決」「元厚労省課長補佐」
【産経】本記・第3社会面2段見出し
      「警察官舎に『赤旗』配布」「元厚労省職員に有罪」
【東京】本記・社会面準トップ4段見出し
      「公務員の赤旗配布罰金刑」「東京地裁『政治的な偏向強い』」
    解説・社会面3段見出し
      「最高裁判例ひたすら踏襲」
    被告側が記者会見・社会面1段見出し
      「『司法の職責投げ出した』」「被告が判決批判」

 一面に据えた新聞はないものの、朝日、毎日、東京の3紙は重要なニュースと判断していることがうかがわれ、主要な要素を盛り込んだ本記のほかに、被告側の「不当な判決」との主張を取り上げた記者会見記事などを掲載しました。毎日、東京は署名の解説記事も掲載。朝日は社説で取り上げ、「果たして刑罰を科すほどのことなのか」と判決に疑問を呈しています。
 対して読売が関係記事を掲載しなかったことが目を引きます。いわゆる「ボツ」です。ニュースとして取り上げるまでもない、ごく当たり前の司法判断、ということなのでしょうか。日経もいわゆる「ベタ」でごく短い記事。産経もごくあっさりした記事です。
 一つのニュースをめぐって、新聞の間で扱いの大きさが分かれることは珍しいことではありません。しかし、今回のように憲法上の争点があった判決をめぐって、社説で取り上げる新聞がある一方で、一行も掲載しない新聞もあるというのは、少なくともわたし自身は前例を思い起こすことができません。同じテーマでも新聞各紙を読み比べ、論調の違い(それは「多様な考え方」ということですが)を知ることで、ニュースの理解は深まります。多様な考え方、価値観が社会に担保されることにもなり、わたしは多種多様の新聞が並び立つこと自体に意義があると考えています。その意味では、今回の読売も、記事を掲載しないこと自体がひとつの価値判断のありようなのかもしれませんが、「それにしても」との思いを禁じえません。
 
 有罪判決の根拠法令である国家公務員法102条は次のように「国家公務員の政治的行為の制限」を規定しています。
第102条 職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。
 2 職員は、公選による公職の候補者となることができない。
 3 職員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問、その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。

 さらに人事院規則14-7では、「政治的行為」の一つとして第6項7号で「政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、配布し又はこれらの行為を援助すること。」とあり、また第4項では「法又は規則によって禁止又は制限される職員の政治的行為は(中略)職員が勤務時間外において行う場合においても、適用される」としています。
 被告・弁護側は、赤旗を配布したのは休日で、しかも公務員とは外見的には分からない格好だったとして、無罪を主張していたと伝えられています。日本国憲法は国民の基本的人権として、21条で集会・結社・表現の自由を定めており、公務員も例外ではありません。公務員は社会全体への奉仕者であり、政治的中立性が必要であるにせよ、国家公務員法が公務員の政治的行為を禁止・制限するのは、憲法上の基本的人権との兼ね合いから必要最小限に限るべきでしょう。同じ「勤務時間外」にしても、職場で休憩時間中に政党機関紙を来庁者に配布するようなケースなら、公務員の政治的中立性を疑わせる行為かもしれません。しかし、外見的に公務員とは分からない、つまり公務員の中立性が疑われるわけではないのに刑事罰を科することは、実質的な意味として公務員に限っては一個人としての思想を処罰することにつながりかねず、表現の自由はおろか、思想、良心の自由をすら侵害することになりかねない―。被告・弁護側の無罪主張には、このような危ぐが込められているとわたしは理解しています。
 こうした争点に、今回の東京地裁判決はどこまで踏み込んで判断を示したか。朝日が社説で、毎日や東京が解説で判決に疑問を呈しているのはまさにこの点ですし、被告・弁護側の記者会見記事で判決への批判を紹介しているのも、この事件では「表現の自由」が最大の争点になっていることを重視しての判断からでしょう。新聞はそれ自体、社会に「表現の自由」が担保されていなければ成り立ちえませんし、だからこそ「表現の自由」を守るのが社会的責務でもあると思います。わたしも今回の判決は、新聞にとって重要ニュースとして取り上げるのに足る問題だと考えています。
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# by news-worker2 | 2008-09-24 07:29 | 表現の自由
d0140015_0151071.jpg 以前のエントリ「『戦争はいらぬ、やれぬ』~朝日新聞むのたけじさんインタビュー記事」で紹介した元朝日新聞記者でジャーナリストむのたけじさんの一問一答式の聞き書きが岩波新書で刊行されました。聞き手の黒岩さんは、むのさんより43歳年下のノンフィクション・ライター。本書の「まえがきにかえて」によると、1997年に初めてインタビューして以来の交友関係で、むのさんが以前、岩波新書を一冊書くと約束したまま果たせないでいることを知り、聞き書きの形を提案。本書の刊行となりました。
 敗戦から63年がたった今、あの戦争を新聞記者として体験し、戦後は戦争反対を貫いてきたむのさんの本書には、多くの価値があると思います。中でも第2章の「従軍記者としての戦争体験」は、インドネシアに従軍記者として派遣された際に見聞きしたことの証言であり、戦争の実相の記録としても貴重だと思います。ここでむのさんは次のように述べています。
 インドネシアでのいろいろな出来事は、『たいまつ十六年』に書いていますが、今回は、これまで本でも、講演でもあまり言わなかったことを話しましょう。それは、本当の戦争とはどういうものか、ということです。


(続きます)
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# by news-worker2 | 2008-09-22 00:30 | 読書