ご訪問ありがとうございます。マスメディアの一角で働く美浦克教が「メディア」や「労働」を主なテーマに運営します。初めてお出での方はカテゴリ「管理人ごあいさつと自己紹介」をご覧ください。


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d0140015_138499.jpg お知らせです。いつもこのブログのエントリーを紹介いただいているニュースサイト「NPJ」(News for the People in Japan)にお誘いをいただき、12月9日午後5時半から東京・立教大学で行われる勉強会「マスメディアと市民メディア 何が伝えられるの?~伝わることと伝わらないこと~」にパネリストの1人として参加することになりました。詳しくはこちらをご覧ください。
 他のパネリストは下村健一さん、田畑光永さん、NPJ編集長の弁護士日隅一雄さんで、コーディネーターは立教大学の服部孝章先生。そうそうたる皆さんの中で、わたしだけ場違いな感じもして気後れしそうなのですが、マスメディアの一角で働く記者の一人として、現場の声のようなものを伝えることが役どころだろうと思います。併せて、市民メディアとマスメディアの間のより良い関係について、わたしなりに思うところもお話できれば、と考えています。
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by news-worker2 | 2008-11-27 01:38 | 新聞・マスメディア
 また自衛隊の不祥事が明らかになりました。広島県江田島市の海自第一術科学校で9月、特殊部隊「特別警備隊」隊員養成課程の25歳の男性3曹が15人相手の格闘訓練をさせられ、頭を強打し死亡していたことを12日、共同通信が報じ、新聞休刊日を挟んで14日、他紙も一斉に続きました。3曹は特別警備隊の養成過程を辞める直前。教官らは遺族に「はなむけのつもりだった」と説明したとされます。共同通信の記事を引用します。
 海上自衛隊の特殊部隊「特別警備隊」の隊員を養成する第一術科学校(広島県江田島市)の特別警備課程で9月、同課程を中途でやめ、潜水艦部隊への異動を控えた男性3等海曹(25)=愛媛県出身、死亡後2曹に昇進=が、1人で隊員15人相手の格闘訓練をさせられ、頭を強打して約2週間後に死亡していたことが12日、分かった。
 教官らは3曹の遺族に「(異動の)はなむけのつもりだった」と説明しており、同課程をやめる隊員に対し、訓練名目での集団暴行が常態化していた疑いがある。海自警務隊は傷害致死容疑などで教官や隊員らから詳しく事情を聴いている。
 3曹の遺族は「訓練中の事故ではなく、脱落者の烙印を押し、制裁、見せしめの意味を込めた集団での体罰だ」と強く反発している。

 この事件に対し海上自衛隊トップの海幕長は14日の会見で「調査してから判断したい」と述べました。同じく共同通信の記事を引用します。
 海上自衛隊の特殊部隊「特別警備隊」(特警隊)の養成課程の男性3等海曹(25)死亡事件で、赤星慶治海幕長は14日の定例会見で、3曹が異動する2日前に格闘訓練が行われたことについて「こういうことをやるのがいいのか、内容が適切なのか、調査してから判断したい」と述べるにとどまった。
 浜田靖一防衛相は同日午前の会見で、1人で15人を相手にする格闘を「特殊、特別な気がしないでもない」として訓練の範囲を逸脱したとの認識を示しており、立場の違いが際立った。

 隊員一人一人の「個」があまりにも軽く扱われる自衛隊のありようについては、このブログでも何回か書いてきましたが、今回の一件は悪質さが際立っています。いったいどういうつもりで「はなむけ」などという言葉を口にできるのか。そして当事者意識を欠いたとしか言いようのない赤星海幕長の発言。常に憲法上の議論にさらされながらも、国家の独立を守るためにのみ保有を許されているはずの〝暴力〟の矛先を身内に向けたことに、この組織はあまりに鈍感だと言わざるを得ません。いったい何を守ろうというのでしょうか。
 以前のエントリで紹介した「自衛隊員が死んでいく」の著者でジャーナリストの三宅勝久さんは、今回の事件についてご自身のブログで次のように指摘していますが、同感です。
 隊内で起きていることは、やがて隊外でも起きる。昨年度暴力で懲戒処分を受けた80人以上のうち、30人近くは一般市民を巻き添えにした事件を起こしている。
 「隊員なんてモノ以下ですよ」とは、現役幹部の言葉である。隊員がモノなら、一般国民は何なのだろうか。武装集団が暴走しはじめてからでは遅い。「軍事オンブズマン」のような第三者の監視制度をつくるなどしてブレーキをかけなければ、危なくて仕方ない。

 海自は事件当日も、3曹が死亡した翌日も、公式発表では15人が相手だったことは伏せていました。真相の隠ぺいを図ったと言えば言い過ぎだとしたら、事件を矮小化したいとの意図が透けて見える、と言ってもいいと思います。実際、発表を受けた新聞各紙の当初の報道は地元向けの小さな記事だけで、全国ニュースにはなりませんでした。
 自衛隊は他官庁と比べて自殺者が出る割合が高く、しかも動機が不明とされているケースが多いことがかねてから指摘されています。先日は、護衛艦乗組員の自殺をめぐって、上官に指導の域を超えた侮蔑的な言動があり、これによるストレスが原因のうつ病で自殺したと認定した福岡高裁判決が確定しました(過去エントリ「ひとこと:護衛艦『さわぎり』訴訟の遺族勝訴判決が確定」)。
 今回の一件を見るにつけても、自衛隊内部には公になっていない幾多のいじめ、リンチなどがあるのではないかと思います。新聞をはじめとしたマスメディアにとっては、そうした個々の腐敗、不正をひとつひとつ暴いていくことができるかが問われているようにも感じます。そのためには、内部告発の受け皿足りうることが必要であり、ここは奮起の時だと考えています。

 15日には、こんな動きもありました(共同通信記事より引用)。「内部告発の受け皿」と密接な関係がある出来事です。
 南シナ海での中国潜水艦の事故をめぐり「防衛秘密」を読売新聞記者に漏らしたとして、自衛隊法違反容疑で書類送検された防衛省の元情報本部課長北住英樹元1等空佐(50)について、東京地検は15日、不起訴処分(起訴猶予)にした。
 元1佐が情報漏えいを認め反省しているほか、2日付で懲戒免職となったことや、防衛省の再発防止策などを考慮した。

 わたしの考えは過去エントリ「軍事が無原則に『表現の自由』『知る権利』に優先する危険~読売新聞情報源の懲戒免職の意味」に書いた通りです。ご一読をお願いいたします。

*追記(2008年10月17日午前2時10分)
 自衛隊の「暴力」の合法、違法については、弁護士の杉浦ひとみさんのブログエントリ「海上自衛隊の『はなむけ』と角界の『かわいがり』比較」の論考が参考になりました。一部を引用します。
 この海上自衛隊の中での暴行の問題は、さらに角界の件とは別の大きな問題があると思います。それは、自衛隊がもともと物理的な力を携えることが法で許容されている集団だからです。そして、その力は隊内部で相互に使われるのではなく、第三者に対して行使されることが想定されているからです。
 力を行使することが法的に認められる立場にある者が、力の使い方についての違法・適法の判断力が養われていない場合、非常に危険なことになります。

 自衛隊に「暴力」が許容されているのは、それが日本の独立を損ねる外敵に向けられることが想定されているからであり、そうでないならば違法である、との指摘だと理解しています。そこがスポーツや武道としての格闘との本質的な違いだと思います。
 
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by news-worker2 | 2008-10-16 02:50
 8日付けの東京新聞夕刊の第2社会面に、宇佐見昭彦記者の署名入りで、麻生首相の〝失言〟(=事実誤認)を指摘する記事が掲載されました。一部を引用します。
 麻生太郎首相の誕生から2週間。地球温暖化に関し、麻生首相が「台風上陸が1度もないのは過去に例がない」と就任時に発言したことが、気象関係者の間で波紋を広げている。過去3例あって事実に反する上、上陸ゼロも異常とは言えず、温暖化との関連も認められないためだ。
 麻生首相は九月二十四日の会見で閣僚名簿を自ら発表。斉藤鉄夫環境相(留任)の名を読み上げた際、この発言が飛び出した。
 だが、一九五一年以降で上陸ゼロは八四年、八六年、二〇〇〇年の三例。九月末までゼロ(十月に上陸)の八七年も含めると、発言時点で首相は過去四例を見落としており、完全に誤りだ。
 また「四年前は九回上陸」も十回の誤り。「平均三回」についても、正確には平年(二〇〇〇年までの三十年平均)の上陸数は二・六だ。

 この記事を読むまで、首相の発言にこんな事実誤認があったとは気付きませんでした。まずは不明を恥じています。その上で、ということになるのですが、首相としていかにも言葉が軽い、との印象はぬぐえません。
 通例では、内閣発足時の閣僚の紹介は官房長官が行っていました。麻生首相は自らそれを行い、新鮮さをアピールしたのかな、と感じていました。しかし、ささやかな労力を惜しまずに調べていれば、このような事実誤認の発言は出るはずもない、そんなレベルの発言です。加えて言うならば、環境相に限らず、首相自らが閣僚を紹介するのであれば、このポストになぜこの人を選んだのか、人選の狙いを語るべきだったと思うのですが、課題は長々と説明しても、人選の意図、狙いはほとんど言及がありませんでした。
 「たかがその程度の発言で目くじらを立てるまでも…」との意見もあるかもしれませんが、新たに首相に就任した政治家の、しかも自らが選んだ閣僚の紹介の中での発言だけに、軽視すべきではないだろうと思います。マスメディアが社会に投げかけるに足る情報だと思います。
 
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by news-worker2 | 2008-10-09 04:07
 お知らせです。新聞労連や民放労連などマスメディア産業関連労組でつくる日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)と日本ジャーナリスト会議(JCJ)が共同で運営しているサイト「憲法メディアフォーラム」に、匿名座談会「女性がメディアで働く、ということは」がアップされました。
 2005年4月に運営がスタートしたこのサイトでは年に2回、新聞や放送の現場の記者、デスクらを招いた匿名座談会が大型コンテンツとして定着しています。6回目の今回は初めて出席者を女性に限定し、女性が働く職場としてのマスメディアを話し合っています。小見出しは以下の通りです。

▽仕事とプライベートの線引きは?
▽今も昔も「男マスコミ」
▽女性問題は女性にしかわからない?
▽正規・非正規と女性差別
▽女性が生き生きと働き続けられるために

 正社員の間にある男女間の不平等と、正社員、非正社員の間の不平等との二重の不平等の構図がある中で、女性差別も双方にまたがって二重の構造となっていることを職場の実情に即して指摘するなど、内容が濃い座談会です。一読をお奨めします。
 トップページからPDF(全13ページ)で読めます。
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by news-worker2 | 2008-10-04 03:20 | 新聞・マスメディア
 弁護士でもある橋下徹大阪府知事が知事就任前、山口県光市の母子殺害事件の差し戻し審被告弁護団について、テレビ番組で「主張内容は荒唐無稽で許されない」などとして、弁護団への懲戒請求を呼び掛けていました。弁護団が橋下氏に賠償を求めていた訴訟の判決が2日、広島地裁であり、橋下氏の発言は名誉棄損に当たるとして800万円の賠償を命じました。
 *判決要旨、記者団に対する橋下氏の一問一答=いずれも共同通信
 請求額は1200万円でしたが、実質的に橋下氏の完敗です。判決は、橋下氏が弁護士として法的根拠がないことを知っていながら、あえて請求を呼び掛けたと認定しました。 判決は刑事弁護の一般論にも通じる数々の判断を示しています。「弁護士の使命は少数派の基本的人権の保護にあり、弁護士の活動が多数派の意向に沿わない場合もあり得る」「刑事弁護人の役割は刑事被告人の基本的人権の擁護であり、多数の人から批判されたことをもって懲戒されることはあり得ない」「(主張が)荒唐無稽だったとしても刑事被告人の意向に沿った主張をする以上、弁護士の品位を損なう非行とは到底言えない」などです。報道で判決要旨を読んだ限りの感想ですが、わたしは裁判官が「橋下氏が法律の専門家でありながら」という点を重視し、だからこそ悪質性が一層高いと判断した、との印象を持っています。
 訴訟では、橋下氏を出演させたテレビ局は係争の当事者になっておらず、従って判決もテレビ局については言及がないようですが、刑事裁判の原理原則、少数意見の尊重に自覚があれば、法律の専門家であってもゲストとして招く以上は人選や発言内容、発言の取り上げ方に留意すべきだったのではないかと思います。
 判決が示した刑事裁判についての数々の指摘は、裁判をどう報じるかという点で、あるいは裁判報道に限らず少数意見の尊重という観点からも、マスメディアの在り方にも深くかかわることだと思います。特に「弁護士の使命は少数派の基本的人権の保護にあり、弁護士の活動が多数派の意向に沿わない場合もあり得る」との指摘は、マスメディアにもそのままではないにせよ、相当程度当てはまるのではないかと思います。社会には多様な意見があること、少数意見は少数であるが故になおさら尊重されなければならないことをマスメディアは忘れてはならないと思いますし、わたし自身もマスメディアで働く一人として、あらためて肝に銘じています。

 光市の事件の差し戻し控訴審とテレビについては、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会が今年4月、各局の番組の検証結果を公表しています。

委員会決定第04号 光市母子殺害事件の差戻控訴審に関する放送についての意見
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by news-worker2 | 2008-10-03 03:31 | 憲法
 以前のエントリで紹介した海上自衛隊の護衛艦「さわぎり」乗組員の自殺をめぐる訴訟で、上官に指導の域を超えた侮蔑的な言動があり、これによるストレスが原因のうつ病で自殺したと認定した福岡高裁判決が確定しました。共同通信の記事を引用します。
3曹自殺訴訟、国の敗訴が確定 防衛次官、上告断念を発表
 海上自衛隊佐世保基地(長崎県佐世保市)の護衛艦さわぎりで男性3等海曹=当時(21)=が自殺した原因を「上司の侮辱的言動によるストレス」と認め、国に350万円の賠償を命じた福岡高裁判決について、防衛省の増田好平事務次官は8日の記者会見で、上告しないことを正式に発表した。両親側逆転勝訴の高裁判決が確定。
 増田次官は「判決を検討した結果、憲法解釈の誤りなど上告理由に当たる事項はなかった。二度と起こらないよう隊員の身上を把握し再発防止に努めたい」と述べた。

 再発防止のためには、まず防衛省・自衛隊が、単に訴訟技術上の方便にとどまることなく、実態として指導の域を超えた上官の「侮蔑的言動」があったことを正面から認めることが必要です。ひとたび出航すればどこにも逃げ場がなく、しかも階級に律せられている海上勤務の自衛隊員が、どれだけ精神的に追い詰められていたかに思いを致し、真に実効的な対策が採られることを期待したいと思います。マスメディアも継続して防衛省・自衛隊の動向をフォローすべきだと思います。
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by news-worker2 | 2008-09-09 01:34 | 憲法
 福田首相が突然の退陣を表明した今月1日夜の記者会見で、最後に「首相の発言は他人事のように聞こえる」と質問した記者に「私は自分を客観的に見ることは出来るんです。あなたとは違うんです」と答えたことが、話題になっているようです。
 例えばJ-CASTニュースは「福田首相『あなたとは違う』発言 『流行語大賞候補』とネットで注目」と題して記事をアップしていますし、朝日新聞は3日付夕刊に関連記事を掲載しました。一部を引用します。
 福田首相は1日夜の辞任会見で「会見がひとごとのようだ」と記者から指摘され、「私は自分のことは客観的に見ることができるんです。あなたとは違うんです」と気色ばんだ。この発言を巡る是非は、インターネットでも沸騰。掲示板では関連スレッド(書き込み群)が乱立し、ブログでも無数に取り上げられた。早くも「今年の流行語大賞に」と“期待”する声もある。

 福田首相のこの答弁を肯定的にみるか、否定的にみるかは人それぞれでしょうが、この答弁のもとになった質問をしたのは、在京の大手マスメディアの政治部記者ではありませんでした。質問をした中国新聞東京支社の道面雅量記者の署名記事をここで紹介し、記録にとどめておきたいと思います。

【記者手帳】首相の辞任会見に思う
 「総理の会見は国民には『人ごと』のように聞こえる。この辞任会見も」。一日夜、福田康夫首相の辞任会見で、そんな質問をぶつけた。首相は「私は自分を客観的に見ることができる。あなたとは違う」と気色ばんだ。生意気な質問だという指摘を受けるかもしれないが、あえて聞いておきたかった。
 昨年十月、米民主党のオバマ上院議員が大統領候補指名を争う中、「米国は核兵器のない世界を追求する」と発言した。首相はどう感じたか、夕方の「ぶらさがり会見」で尋ねた。返答は次のようなものだった。
 「そりゃ、そういう世界が実現すれば、それにこしたことはないと思います。まあ、いずれにしてもですね、核兵器を保有する、その競争をするような世界では、あまりよくないと思いますけどね」。被爆国の首相の言葉としては、あまりに物足らなく感じた。
 福田首相は確かに自身の置かれた状況を客観視し、慎重に発言する人だと思う。しかし、それだけでは務まらないのが首相の重責だろう。国民に自身の明確な意思を伝える必要に常に迫られている。辞任会見を聞きながら過去の取材経験がよみがえり、どうしても聞かずにはおれなかった。


*追記(2008年9月6日午前9時)
 タイトルを「福田首相に『あなたとは違うんです』と言わしめた中国新聞記者」から変えました。広島の中国新聞にしても、長崎新聞にしても、〝被爆地の新聞〟で働いていることにこだわり続ける人たちがいることを、新聞労連の専従時代に知りました。道面記者は名実ともに〝被爆地の新聞記者〟だと思います。
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by news-worker2 | 2008-09-04 02:14 | 新聞・マスメディア
d0140015_19103025.jpg ことし4月に刊行されたときから早く読みたいと思いながら、先日ようやく読み終えました。著者の湯浅誠さんはNPO法人自立生活サポートセンター「もやい」の事務局長。研究者やジャーナリストとはまた違う視点から、ホームレスや生活困窮者の支援の具体的な実践を踏まえて書かれたリポートです。豊富な実例や統計データの精緻な分析が掲載されていますが、その紹介はここでは割愛し、わたしにとって印象深かった点をいくつか紹介したいと思います。

 第一は、貧困が社会の問題として見えていないとの指摘です。第3章「貧困は自己責任なのか」で著者は「貧困の実態を社会的に共有することは、しかし貧困問題にとって最も難しい。問題や実態がつかみにくいという『見えにくさ』こそが、貧困の最大の特徴だからだ」とした上で「姿が見えない、実態が見えない、そして問題が見えない。そのことが、自己責任論を許し、それゆえにより一層社会から貧困を見えにくくし、それがまた自己責任論を誘発する、という悪循環を生んでいる。貧困問題解決への第一歩は、貧困の姿・実態・問題を見えるようにし(可視化し)、この悪循環を断ち切ることに他ならない」と指摘しています。「本人の努力が足りないからだ」との「自己責任」の先入観がある限り貧困は可視化されない、という意味に受け止めています。
このことは、マスメディアの報道にもかかわってくる問題なのではないかと考えています。ここ2年ほどの間に、報道でも「ワーキングプア」という用語が定着し、「格差」が社会の問題として位置付けられるようになった観があります。しかし、知識として「ワーキングプア」や「格差社会」を意識しているつもりではいても、一歩踏み込んでマスメディアがどこまで「貧困」を社会問題として意識しているか。やはりマスメディアの側が自己責任論から完全には解き放たれていないのではないか。本書を読んで、そのことに思い至りました。

続きます
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by news-worker2 | 2008-08-15 02:20 | 読書
 以前のエントリ「趣の異なる新聞不祥事~英文毎日の不適切コラム問題」で取り上げた英文毎日のコラム「WaiWai」問題で、毎日新聞社が7月中旬に社内調査結果を公表することを7日付の紙面とサイトで明らかにしました。第三者機関「『開かれた新聞』委員会」の見解も公表するようです。
 毎日新聞のサイト「毎日JP」のバナーがしばらく前から自社ものだけになっています。英文毎日の問題が広告に影響しているのだとすれば、マスメディアのネット展開の上からも、大きな出来事と位置づけられると思います。
 この問題ではブログ「ガ島通信」の藤代裕之さんのエントリ「毎日新聞『Wai Wai』問題と私刑化する社会とネット時代の企業広報の視点」が参考になります。

*追記(2008年7月10日午前8時半)
 この問題を取り上げたネット上の記事が目につくようになってきました。

 「『毎日jp』が自社広告だらけに、ネット上に深いつめ跡残る」ITpro

 「毎日jpのビジネスモデルが事実上の破綻、低俗記事乱発で広告出稿が激減」Technobahn

 「インターネットにようこそ。」ひろゆき@オープンSNS
  
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by news-worker2 | 2008-07-08 08:46 | 新聞・マスメディア
 毎日新聞社が27日、英文サイト「毎日デイリーニューズ」のコラム「WaiWai」に不適切な記事を掲載していたとして、担当記者らの処分を決めました。毎日.jpの告知記事を引用します。

 毎日新聞社:「WaiWai」問題で処分
 毎日新聞社は27日、英文サイト「毎日デイリーニューズ」上のコラム「WaiWai」に不適切な記事が掲載された問題で、コラムを担当していた英文毎日編集部記者を懲戒休職3カ月にした。また、監督責任を問い高橋弘司英文毎日編集部長を役職停止2カ月、当時のデジタルメディア局次長の磯野彰彦デジタルメディア局長を役職停止1カ月の懲戒処分とした。このほか、当時のデジタルメディア局長の長谷川篤取締役デジタルメディア担当が役員報酬の20%(1カ月)、当時の常務デジタルメディア担当の朝比奈豊社長が役員報酬10%(1カ月)を返上する処分とした。
 本社は、担当記者が国内の雑誌に掲載された風俗記事を英文サイトに引用する際、不適切な描写のまま英文に翻訳した結果、多くの読者に不快感を与え、インターネット上で批判を受けるなど信頼を損なったと判断した。上司については、記事のチェックを怠るなどの監督責任を問うた。WaiWaiは今月21日に閉鎖している。

 問題の経緯は、毎日新聞の告知記事では以下のようになっています。引用が多くなることは承知していますが、報道記事ではなく毎日新聞の見解ですし、正確性を期すためにそのまま引用します。

 「WaiWai」コラムの前身は1989年10月、紙の新聞の「毎日デイリーニューズ」上で連載を開始した。その後、紙の新聞の休刊に伴い、2001年4月19日からはウェブサイト上の「WaiWai」として再スタートした。
 英文毎日編集部に籍を置く日本在住の外国人記者と外部のライターが執筆し、日本国内で発行されている雑誌の記事の一部を引用しながら、社会や風俗の一端を英語で紹介した。どのような記事を選択するかは主に外国人記者が行った。
 5月下旬、過去の掲載記事について「内容が低俗すぎる」「日本人が海外で誤解される」などの指摘・批判が寄せられ、調査した結果、不適切な記事が判明し、削除した。それ以外の記事についてもアクセスできない措置を取り、チェックを続けていた。
 6月中旬、削除した記事がネット上で紹介され、改めて批判・抗議が寄せられた。
 さらに調べた結果、元記事にはない内容を記者が加えていたケースも1件確認された。品性を欠く情報発信となったことを反省し、全面的に閉鎖することにした。
 その後、今回の問題についての経緯とおわびを日本語と英語でウェブサイトに掲載。25日付朝刊本紙にもおわびを載せた。
 社内調査に対し、記者は「風俗の一端と考え、雑誌記事を引用し紹介したが、引用する記事の選択が不適切だった。申し訳なかった」と話している。同コラムの執筆を記者に委ね、編集部内での原稿のチェックが不十分で、編集部に対する上司の監督にも不備があった。


 さらに毎日新聞社は、今回の措置が妥当だったか、社外の有識者でつくる第三者委員会に見解を求めることも明らかにしています。いずれ第三者委員会の見解も紙面で明らかにされることと思います。
 今回の問題では、ネット上にまとめサイト「毎日新聞の英語版サイトがひどすぎる まとめ@wiki」などもあります。わたし自身は、6月20日にネット上のニュースサイト「JCASTニュース」が取り上げたことで知りました。実際にどんな記事がアップされていたのかを正確に知っているわけではないので、コラムの記事掲載の是非そのものに対する考えの表明は、ここでは差し控えたいと思います。毎日新聞社がコラムの閉鎖、担当者や上司の処分に踏み切るには、JCASTニュースの記事掲載が大きな契機になったのは間違いがないようですが、その間の経過、とりわけ毎日新聞社内の状況をうかがい知るにはあまりに情報が少ないので、毎日新聞社の判断の是非自体についても意見の表明は控えたいと思います。
 その上で、ということになりますが、わたしは今回の1件は、ネットと既存マスメディア(この場合は大手新聞社ということになると思いますが)の関係を考える上で後世にも記録される出来事の1つではないかと考えています。
 これまでも新聞社が取材・編集上の不祥事に対して、懲戒の内部処分を行うことはありましたが、大半は故意に記事や取材情報がねつ造されていたか、他者の記事を盗用していたケースでした。また、こうしたケースでは名誉を傷つけられたり、著作権を侵害される直接の被害者の個人や団体が存在することが多く、不祥事の発覚もそうした当事者からの通報が端緒になっていました。報道内容に明白な誤りがあり、関係当事者に謝罪や賠償が行われるケースでも、取材・報道の過程に故意や重大な過失がない限りは、懲戒処分にまでは至らないケースが多かったと思います。
 あらためて英文毎日サイトの今回の1件をみると、毎日新聞社は「担当記者が国内の雑誌に掲載された風俗記事を英文サイトに引用する際、不適切な描写のまま英文に翻訳した結果、多くの読者に不快感を与え、インターネット上で批判を受けるなど信頼を損なったと判断した」と説明しています。故意のねつ造や盗用ではなく、また事実関係の誤りがあったわけでもなく(経緯の報告では「元記事にはない内容を記者が加えていたケースも1件確認された」ともありますので、この点は毎日新聞社の最終的な調査結果を待ちたいと思いますが)、特定の個人、団体が具体的な被害を受けたわけでもないと、少なくとも毎日新聞社は現時点でそう判断していると読み取れます。強いて言えば、当該コラムの被害者は特定個人や団体ではなく不特定多数のネットユーザーであり、被害も個々の名誉棄損や著作権侵害ではなく不特定多数のネットユーザーの不快感ということになるのでしょうか。わたしは、今までの新聞社の不祥事と比べて、当の新聞社が不祥事と認定するに至った経緯も理由も、今までの不祥事とは相当に趣の異なるケースだと受け止めています。
 この1件をネットと既存マスメディアの関係でどう意味づければいいのか、わたし自身はまだ考えが整理できていませんが、キーワードの1つは「信頼」になるのではないかと思います。情報の信頼性を身上としてきた新聞社がネット展開していく際に何よりも重んじなければならず、かつまた事業としてもネット展開に展望を持てるかどうかを左右するのはやはり「信頼」なのだと思います。
 そもそも新聞本紙だったら週刊誌の風俗記事からの引用記事が掲載されることがあるだろうか、ということも考えています。新聞社の日本語サイトのコンテンツの中心は、本紙向けに取材し書かれた記事です。今回の1件が、紙としては発行を取りやめた英文サイトのコラムだったから起こってしまったことなのかどうか。いずれにせよ、毎日新聞社の第三者委員会の見解が明らかにされるのを待って、わたしも考えをまとめてみたいと思います。
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by news-worker2 | 2008-06-30 01:11 | 新聞・マスメディア