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 前回のエントリで取り上げたNHK番組改変訴訟の最高裁判決を、昨日(6月14日)の明治学院大社会学部での講義のテーマにしました。ここ2回は「表現規制と新聞ジャーナリズム」について話しており、昨日の講義は当初、個人情報保護法案の原案や人権擁護法案の中にマスメディアの取材・報道規制がどのように組み込まれていたのかを話すつもりでしたが、急きょ、予定を変更しました。このNHKの番組改変問題はマスメディアの「自己規制」という意味で「表現規制」と密接にかかわると考えたからです。
 講義では各紙ごとの判決報道のニュアンスの違いを説明しながら、前回のエントリで触れた「編集権」の2つの論点についてもわたしの考えを話しました。マスメディアが組織ジャーナリズムである以上、組織としての一貫性と統合性が問われるのは当然です。マスメディア組織外へ向かっての「編集権」が、外部から制約を受けることは原則としてあってはならないこととわたしも考えています。しかしマスメディアの組織内の問題として「編集権」を考えていくと、マスメディアの内部で働く記者個々の良心、内心の自由の問題に行き当たります。一般論として、「編集権を行使するものは経営管理者およびその委託を受けた編集管理者に限られる」(新聞協会の編集権声明=1948年)として、その編集権行使が権力監視に向けて働くのならともかく、権力におもねることに向けられるとしたら、マスメディア内部の個々の良心は組織の中で行き場を失ってしまうと思います。
 講義の後、学生の一人から感想を聞かせてもらいましたが、興味深く聞いてもらえたようで手ごたえを感じることができました。
 学生たちに話しながら、各紙の報道の見出しを比べるにしても社説、解説とともに本記記事(判決の内容を伝える基本的な記事で、各紙とも今回は一面に掲載しています)も並べた方が理解の助けになるかと思い、前回のエントリのその部分を以下にあらためて載せます。本記の見出しは一番大きな「主見出し」です。
【朝日】
本記:市民団体が逆転敗訴
解説:「期待と信頼」限定的に解釈
社説:勝訴で背負う自立の責任
【毎日】
本記:最高裁「期待権」認めず
解説:編集の自由、最大限に尊重
社説:報道の自由に重きを置いた
【読売】
本記:NHK逆転勝訴
解説:編集の自由尊重 「期待権」約束ある場合に限定
社説:「期待権」を退けた妥当な判決
【産経】
本記:最高裁逆転判決 原告の団体敗訴
解説:「報道の自由」に重き
社説:NHKと朝日は再検証を(「主張」)
【東京】
本記:NHKが逆転勝訴
解説:「政治家の影響」言及せず
社説:政治からも自由確保を

 講義テーマは次回から「ネット時代の新聞ジャーナリズム」に移る予定です。
 ところで、以前のエントリでは新聞は直接、法による取材・報道規制が問題になることがなかったと書きましたが、先日、メディア研究者らの勉強会に参加し、以外に知られていない直接の法規制が一つあることを知りました。検察審査会法の第44条です。
 第44条 検察審査員が会議の模様又は各員の意見若しくはその多少の数を漏らしたときは、1万円以下の罰金に処する。
2 前項の事項を新聞紙その他の出版物に掲載したときは、新聞紙に在つては編集人及び発行人を、その他の出版物に在つては著作者及び発行者を2万円以下の罰金に処する。

 会議の秘密は裁判員裁判でも論点の一つになっており、裁判員が秘密を漏らした場合の罰則規定は裁判員法第108条に設けられていますが、「新聞紙」「出版物」への罰則規定はありません。
 検察審査会法は1948年7月の法律です。漏らした検察審査員への刑罰よりも、掲載したメディア側の刑罰の方が重いのは興味深いと思います。おそらく敗戦後の占領下という時代背景があったのだと思いますが、機会があればこの規定が盛り込まれた経緯を調べてみたいと考えています。
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by news-worker2 | 2008-06-16 00:55 | 非常勤講師
 この数日、日本マクドナルドがいわゆる「名ばかり管理職」を見直し、店長にも残業代を支給すると発表したり(20日)、トヨタ自動車が「QCサークル」活動に残業代を支払うことを決めたと報じられたり(22日)と、正社員労働者の働き方、働かされ方をめぐる報道が相次いでいます。企業の労務管理のコンプライアンスをめぐる動きとしてわたしも注目していますが、例えば朝日新聞がマクドナルドについて「ただ、店長手当は打ち切り、支払う給与の総額は増やさないといい、待遇改善の効果は薄いとみられる」と書いているように、形を変えて賃金抑制や長時間労働が続くのではないかとの懸念も指摘されています。
 マクドナルドについての朝日新聞21日付朝刊記事を一部引用します。
 ハンバーガーチェーンの日本マクドナルドは20日、直営店の店長約2千人に、8月から残業代を支払うと発表した。権限が大きくないのに残業代が支払われない「名ばかり管理職」だと指摘されていたためだ。ただ、店長手当は打ち切り、支払う給与の総額は増やさないといい、待遇改善の効果は薄いとみられる。
 残業代を払うようにするのは、直営店の店長のほか、複数の拠点を管理する「エリア営業管理職」数百人。社内では管理職との位置づけは変えないが、法的には「経営者と一体的な立場」とされる「管理監督者」ではなくなる。上に立つ管理監督者は、「ディレクター・オブ・セールス(販売部長)」が務める。
 店長には、これまで基本給、成果給に加え、店長手当などの「職務給」があった。今回の制度変更で職務給がなくなり、代わりに残業代にあたる「時間外労務手当」を払う。残業代の支払い総額の見込みは示さなかったが、店長らへの給与の支払い総額は、いまと変わらないという。

d0140015_2393135.jpg 雇用の規制緩和で有期雇用や契約社員、派遣社員、パートなど細切れで不安定な働き方を強いられている非正規雇用が労働者の3分の1を占め、偽装請負などの違法な雇用やワーキングプアが社会問題になっている一方で、正社員という働き方、働かされ方も過酷になってきていると感じざるをえません。雇用や労働の現状を社会の問題としてどういうふうにとらえ理解し、今後のあるべき方向をどうやって探っていけばいいのか。その一助になるのが、弁護士の中野麻美さんの「労働ダンピング―雇用の多様化の果てに」(岩波新書)です。

(続きます)
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by news-worker2 | 2008-05-23 01:10 | 読書