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 弁護士でもある橋下徹大阪府知事が知事就任前、山口県光市の母子殺害事件の差し戻し審被告弁護団について、テレビ番組で「主張内容は荒唐無稽で許されない」などとして、弁護団への懲戒請求を呼び掛けていました。弁護団が橋下氏に賠償を求めていた訴訟の判決が2日、広島地裁であり、橋下氏の発言は名誉棄損に当たるとして800万円の賠償を命じました。
 *判決要旨、記者団に対する橋下氏の一問一答=いずれも共同通信
 請求額は1200万円でしたが、実質的に橋下氏の完敗です。判決は、橋下氏が弁護士として法的根拠がないことを知っていながら、あえて請求を呼び掛けたと認定しました。 判決は刑事弁護の一般論にも通じる数々の判断を示しています。「弁護士の使命は少数派の基本的人権の保護にあり、弁護士の活動が多数派の意向に沿わない場合もあり得る」「刑事弁護人の役割は刑事被告人の基本的人権の擁護であり、多数の人から批判されたことをもって懲戒されることはあり得ない」「(主張が)荒唐無稽だったとしても刑事被告人の意向に沿った主張をする以上、弁護士の品位を損なう非行とは到底言えない」などです。報道で判決要旨を読んだ限りの感想ですが、わたしは裁判官が「橋下氏が法律の専門家でありながら」という点を重視し、だからこそ悪質性が一層高いと判断した、との印象を持っています。
 訴訟では、橋下氏を出演させたテレビ局は係争の当事者になっておらず、従って判決もテレビ局については言及がないようですが、刑事裁判の原理原則、少数意見の尊重に自覚があれば、法律の専門家であってもゲストとして招く以上は人選や発言内容、発言の取り上げ方に留意すべきだったのではないかと思います。
 判決が示した刑事裁判についての数々の指摘は、裁判をどう報じるかという点で、あるいは裁判報道に限らず少数意見の尊重という観点からも、マスメディアの在り方にも深くかかわることだと思います。特に「弁護士の使命は少数派の基本的人権の保護にあり、弁護士の活動が多数派の意向に沿わない場合もあり得る」との指摘は、マスメディアにもそのままではないにせよ、相当程度当てはまるのではないかと思います。社会には多様な意見があること、少数意見は少数であるが故になおさら尊重されなければならないことをマスメディアは忘れてはならないと思いますし、わたし自身もマスメディアで働く一人として、あらためて肝に銘じています。

 光市の事件の差し戻し控訴審とテレビについては、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会が今年4月、各局の番組の検証結果を公表しています。

委員会決定第04号 光市母子殺害事件の差戻控訴審に関する放送についての意見
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by news-worker2 | 2008-10-03 03:31 | 憲法
 少し時間がたってしまいましたが、新聞ジャーナリズムをめぐって前例を思い起こすことができないくらい異例で、なおかつ社会の表現の自由を考える上でも重要な問題だと考えていることですので、記録に残す意味も含めて、このエントリを書くことにしました。
 小泉純一郎首相の元で郵政民営化が最大争点になった2005年9月の衆院選の投開票日前日に、東京都内の警視庁職員官舎の集合郵便ポストに共産党の機関紙「しんぶん赤旗」を配布していた厚生労働省の元課長補佐が、住居侵入の現行犯で逮捕されました。住居侵入容疑については不起訴でしたが、国家公務員の政治的行為の制限を定めた国家公務員法に違反するとして、国家公務員法違反罪で起訴されました。東京地裁は9月19日、求刑通り罰金10万円の判決を言い渡しました。
 前例のないほど異例、というのはこの判決の翌20日付け朝刊の新聞各紙の報道ぶりです。東京都内の最終版を調べた限りでは、次のようでした。

【朝日】本記・第2社会面3段見出し
      「元厚労省職員に罰金刑」「東京地裁 赤旗の配布『政治的』」
    被告の記者会見・第2社会面2段見出し
      「『私生活なのに』元職員」
    社説
      「政党紙配布 公務員への刑罰どこまで」
【毎日】本記・社会面準トップ4段見出し
      「元厚労課長補佐 有罪」「赤旗配布に罰金10万円」「東京地裁判決」
    解説・社会面3段見出し
      「34年前の判例 またも踏襲」
    被告側の記者会見・社会面1段見出し
      「『事実見てない』『中味薄っぺら』」「被告ら会見」
【読売】記事の掲載なし
【日経】本記・第2社会面1段見出し(全文12行)
      「官舎に『赤旗』配布で有罪判決」「元厚労省課長補佐」
【産経】本記・第3社会面2段見出し
      「警察官舎に『赤旗』配布」「元厚労省職員に有罪」
【東京】本記・社会面準トップ4段見出し
      「公務員の赤旗配布罰金刑」「東京地裁『政治的な偏向強い』」
    解説・社会面3段見出し
      「最高裁判例ひたすら踏襲」
    被告側が記者会見・社会面1段見出し
      「『司法の職責投げ出した』」「被告が判決批判」

 一面に据えた新聞はないものの、朝日、毎日、東京の3紙は重要なニュースと判断していることがうかがわれ、主要な要素を盛り込んだ本記のほかに、被告側の「不当な判決」との主張を取り上げた記者会見記事などを掲載しました。毎日、東京は署名の解説記事も掲載。朝日は社説で取り上げ、「果たして刑罰を科すほどのことなのか」と判決に疑問を呈しています。
 対して読売が関係記事を掲載しなかったことが目を引きます。いわゆる「ボツ」です。ニュースとして取り上げるまでもない、ごく当たり前の司法判断、ということなのでしょうか。日経もいわゆる「ベタ」でごく短い記事。産経もごくあっさりした記事です。
 一つのニュースをめぐって、新聞の間で扱いの大きさが分かれることは珍しいことではありません。しかし、今回のように憲法上の争点があった判決をめぐって、社説で取り上げる新聞がある一方で、一行も掲載しない新聞もあるというのは、少なくともわたし自身は前例を思い起こすことができません。同じテーマでも新聞各紙を読み比べ、論調の違い(それは「多様な考え方」ということですが)を知ることで、ニュースの理解は深まります。多様な考え方、価値観が社会に担保されることにもなり、わたしは多種多様の新聞が並び立つこと自体に意義があると考えています。その意味では、今回の読売も、記事を掲載しないこと自体がひとつの価値判断のありようなのかもしれませんが、「それにしても」との思いを禁じえません。
 
 有罪判決の根拠法令である国家公務員法102条は次のように「国家公務員の政治的行為の制限」を規定しています。
第102条 職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。
 2 職員は、公選による公職の候補者となることができない。
 3 職員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問、その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。

 さらに人事院規則14-7では、「政治的行為」の一つとして第6項7号で「政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、配布し又はこれらの行為を援助すること。」とあり、また第4項では「法又は規則によって禁止又は制限される職員の政治的行為は(中略)職員が勤務時間外において行う場合においても、適用される」としています。
 被告・弁護側は、赤旗を配布したのは休日で、しかも公務員とは外見的には分からない格好だったとして、無罪を主張していたと伝えられています。日本国憲法は国民の基本的人権として、21条で集会・結社・表現の自由を定めており、公務員も例外ではありません。公務員は社会全体への奉仕者であり、政治的中立性が必要であるにせよ、国家公務員法が公務員の政治的行為を禁止・制限するのは、憲法上の基本的人権との兼ね合いから必要最小限に限るべきでしょう。同じ「勤務時間外」にしても、職場で休憩時間中に政党機関紙を来庁者に配布するようなケースなら、公務員の政治的中立性を疑わせる行為かもしれません。しかし、外見的に公務員とは分からない、つまり公務員の中立性が疑われるわけではないのに刑事罰を科することは、実質的な意味として公務員に限っては一個人としての思想を処罰することにつながりかねず、表現の自由はおろか、思想、良心の自由をすら侵害することになりかねない―。被告・弁護側の無罪主張には、このような危ぐが込められているとわたしは理解しています。
 こうした争点に、今回の東京地裁判決はどこまで踏み込んで判断を示したか。朝日が社説で、毎日や東京が解説で判決に疑問を呈しているのはまさにこの点ですし、被告・弁護側の記者会見記事で判決への批判を紹介しているのも、この事件では「表現の自由」が最大の争点になっていることを重視しての判断からでしょう。新聞はそれ自体、社会に「表現の自由」が担保されていなければ成り立ちえませんし、だからこそ「表現の自由」を守るのが社会的責務でもあると思います。わたしも今回の判決は、新聞にとって重要ニュースとして取り上げるのに足る問題だと考えています。
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by news-worker2 | 2008-09-24 07:29 | 表現の自由
 以前のエントリで紹介した海上自衛隊の護衛艦「さわぎり」乗組員の自殺をめぐる訴訟で、上官に指導の域を超えた侮蔑的な言動があり、これによるストレスが原因のうつ病で自殺したと認定した福岡高裁判決が確定しました。共同通信の記事を引用します。
3曹自殺訴訟、国の敗訴が確定 防衛次官、上告断念を発表
 海上自衛隊佐世保基地(長崎県佐世保市)の護衛艦さわぎりで男性3等海曹=当時(21)=が自殺した原因を「上司の侮辱的言動によるストレス」と認め、国に350万円の賠償を命じた福岡高裁判決について、防衛省の増田好平事務次官は8日の記者会見で、上告しないことを正式に発表した。両親側逆転勝訴の高裁判決が確定。
 増田次官は「判決を検討した結果、憲法解釈の誤りなど上告理由に当たる事項はなかった。二度と起こらないよう隊員の身上を把握し再発防止に努めたい」と述べた。

 再発防止のためには、まず防衛省・自衛隊が、単に訴訟技術上の方便にとどまることなく、実態として指導の域を超えた上官の「侮蔑的言動」があったことを正面から認めることが必要です。ひとたび出航すればどこにも逃げ場がなく、しかも階級に律せられている海上勤務の自衛隊員が、どれだけ精神的に追い詰められていたかに思いを致し、真に実効的な対策が採られることを期待したいと思います。マスメディアも継続して防衛省・自衛隊の動向をフォローすべきだと思います。
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by news-worker2 | 2008-09-09 01:34 | 憲法
 海上自衛隊の護衛艦乗組員だった海上自衛隊の男性隊員が1999年、艦内で自殺したのは上官のいじめが原因だったとして、遺族が国に損害賠償を求めた訴訟で、福岡高裁が25日、請求を棄却した一審判決を見直し、350万円の支払いを命じる逆転判決を言い渡しました。直接「いじめ」という言葉で不法行為を認定しているわけではないようですが、上官に指導の域を超えた侮蔑的な言動があり、これによるストレスが原因のうつ病で自殺したと認定したようです。遺族側の逆転勝訴と言っていいと思います。共同通信の記事を引用します。

海自3曹自殺で賠償命令 国に350万、福岡高裁
 海上自衛隊佐世保基地(長崎県佐世保市)の護衛艦さわぎりの艦内で1999年、男性3等海曹=当時(21)=が自殺したのは上司のいじめが原因として、宮崎市の両親が国に2000万円の賠償などを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は25日、請求を棄却した1審長崎地裁佐世保支部判決を変更、350万円の支払いを命じた。
 判決理由で牧弘二裁判長は「3曹はうつ病が原因で自殺したと認められ、その原因は上司の侮辱的言動によるストレス」と認定。「上司の言動は3曹をひぼうし、心理的負荷を過度に蓄積させるような内容で、指導の域を超える違法なものだ」と指摘し、自殺と因果関係があると判断、国の安全配慮義務違反を認めた。

 判決後に記者会見した原告遺族は「再発防止の第一歩は、国が上告せずに判決を受け入れることだ」と指摘しました。再び共同通信の記事を引用します。

「自衛官の人権に配慮を」 侮辱的言動の認定で両親
 海上自衛隊佐世保基地(長崎県佐世保市)の護衛艦さわぎりの艦内で男性3等海曹=当時(21)=が自殺した原因を上司の侮辱的言動と認定し、国に賠償を命じた福岡高裁判決を受けて、宮崎市に住む両親が25日午後、福岡市内で記者会見し「判決を機に、少しでも自衛官の人権に目を向けてほしい」と訴えた。
 3曹の父親は「画期的な判決をいただいた」と安堵の表情を見せ、「自殺を考えたり悩んだりしている自衛官は、ほかにもいるはずだ。再発防止の第一歩は、国が上告せずに判決を受け入れることだ」と指摘した。
 
 この「さわぎり」自殺訴訟は、以前のエントリで紹介したジャーナリスト三宅勝久さんの著書「自衛隊員が死んでいく」にもレポートが掲載されています。護衛艦乗組員の自殺をめぐる訴訟はほかにもあり、航空自衛隊では女性自衛官へのセクシャルハラスメント、退職強要をめぐる訴訟も提起されていることも紹介されています。 
 常に憲法9条との関係が論議になる自衛隊ですが、憲法との関わりでのありように様々な意見があることはひとまず置くとして、「組織と個人」の観点から考えるとき、わたしは防衛省・自衛隊がメンツにこだわることなく、一人の若い自衛官が自ら命を絶った事実に率直に向き合ってほしいと思います。原因が上官のパワーハラスメントとも呼べる言動にあったと司法が認定したことの重みは相当なものです。上官の個人的資質に問題を矮小化させることなく、組織として隊員個々人をどう守っていくのかを考えてほしいと思います。
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by news-worker2 | 2008-08-26 02:52 | 憲法
 NHKが2001年1月に放送した「ETV2001 問われる戦時性暴力」が放送直前に改変された問題で、番組の取材に協力した「『戦争と女性への暴力』日本ネットワーク」(バウネット・ジャパン)が、当初受けた説明とは異なる内容で放送されたとして、NHKと制作会社2社に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷が6月12日、原告の請求を棄却するNHK側の逆転勝訴判決を言い渡しました(判例検索システム)。
 争点は、取材を受けた側が、番組内容に抱いた期待が「期待権」として法律上の保護対象になるかどうかでした。また、この番組をめぐっては、改変に際してNHK幹部に当時の安倍晋三官房副長官(後の首相)らから圧力が加えられたと朝日新聞が報じた経緯もあり、その点も争点焦点になっていました。
 結果から言えば、最高裁は取材を受ける側の「期待権」は原則として法的な保護の対象にはならないとの判断を示しました。二点目も、安倍氏がNHK幹部に「従軍慰安婦問題について持論を展開した上、NHKがとりわけ求められている公正中立の立場で報道すべきではないかと指摘した」ことは認定しながらも、それがNHK幹部らにどう受け止められたかなどの判断は示しませんでした。
 「報道の自由」に直結するテーマが争点になっていたことから、13日付の新聞各紙朝刊もこの判決を大きく報じました。朝日、毎日、読売、産経、東京各紙の東京都内の最終版をチェックしたところでは、おおむね「報道の自由を尊重した判断」と受け止めている点は各紙共通です。その上で、社説や解説に各紙それぞれのニュアンスの違いが表れています。見出しだけを以下に列挙します。
【朝日】
解説:「期待と信頼」限定的に解釈
社説:勝訴で背負う自立の責任
【毎日】
解説:編集の自由、最大限に尊重
社説:報道の自由に重きを置いた
【読売】
解説:編集の自由尊重 「期待権」約束ある場合に限定
社説:「期待権」を退けた妥当な判決
【産経】
解説:「報道の自由」に重き
社説:NHKと朝日は再検証を(「主張」)
【東京】
解説:「政治家の影響」言及せず
社説:政治からも自由確保を

 今回はNHKという放送法の適用を直接受けている放送マスメディアの問題で、新聞にもこの判例がただちに適用されるかどうかは検討の余地があると思いますが、そのことはさておくとするなら、わたしはマスメディアの「編集権」「編集の自由」にどのようなイメージを持つかによって、今回の最高裁判決の意味は立場によって、人それぞれによって変わってくるのではないかと考えています。
 「編集権」の帰属主体を、自己完結した存在としてのマスメディアに求めるならば、最高裁判決はまさにマスメディアの「報道の自由」を取材相手との関係で最大限尊重したものとして、高く評価することができるでしょう。一方で、ではマスメディアの中で「編集権」はどこに帰属するのか、と考えると、別の論点が浮上すると思います。
 NHKなど放送局も加盟している日本新聞協会には、1948年3月に出された「編集権声明」があります。この声明ではまず「新聞の自由は憲法により保障された権利であり、法律により禁じられている場合を除き一切の問題に関し公正な評論、事実に即する報道を行う自由である」とし、「1 編集権の内容」に続いて、以下のようにうたわれています。

2 編集権の行使者
 編集内容に対する最終的責任は経営、編集管理者に帰せられるものであるから、編集権を行使するものは経営管理者およびその委託を受けた編集管理者に限られる。新聞企業が法人組織の場合には取締役会、理事会などが経営管理者として編集権行使の主体となる。
3 編集権の確保
 新聞の経営、編集管理者は常時編集権確保に必要な手段を講ずると共に個人たると、団体たると、外部たると、内部たるとを問わずあらゆるものに対し編集権を守る義務がある。外部からの侵害に対してはあくまでこれを拒否する。また内部においても故意に報道、評論の真実公正および公表方法の適正を害しあるいは定められた編集方針に従わぬものは何人といえども編集権を侵害したものとしてこれを排除する。編集内容を理由として印刷、配布を妨害する行為は編集権の侵害である。

 今回のNHKの問題では、安倍氏らから圧力がかかりNHK内部で番組改変が上意下達で行われたとの趣旨の告発を取材担当者が行った経緯がありました。この点について、NHKが敗訴した2審東京高裁判決では、安倍氏との面談を経てNHK幹部がその意志を忖度して改変に動いたと認定されました。おそらく「内部においても~定められた編集方針に従わぬものは何人といえども編集権を侵害したものとしてこれを排除する」との方針の下で、改変が進んだのだろうとわたしは考えています。そうした「編集権の確保」の動機が政治への忖度だとしたら、編集権は公権力の監視のために行使されたのではなかったと言わざるを得ない、と思います。しかし、最高裁はそうした政治との間合いの脈絡でNHKの内部の事情を検証し、判断を示すことは避けてしまいました。
 新聞協会の声明が明示している通り、マスメディアの「報道の自由」の根底にある「編集権」には、対外的な側面と対内的な側面との2つの論点があります。わたしは、報道の自由をめぐって今回の最高裁判決が対外的な側面から積極判断を示したことは諒としつつ、対内的な側面では判断を示さなかったことに割り切れなさを感じています。マスメディアの在り方を考えるとき、今回の判決は手放しで評価できるものではないだろうと考えています。
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by news-worker2 | 2008-06-14 02:16 | 新聞・マスメディア
 自衛隊のイラク派遣をめぐって名古屋高裁が17日、航空自衛隊派遣部隊の活動が憲法違反とイラク復興支援特別措置法違反にあたるとの判断を示しました。裁判の結論としては、原告が求めた派遣差し止めと損害賠償のいずれも再び退けられ、国の勝訴ですが、そのことで国には上告の理由がなくなり、違憲判断を含んだ今回の判決は確定する見通しのようです。
 詳しい判断の内容は、18日付朝刊の新聞各紙におそらく掲載される判決理由の要旨を参照してもらいたいと思います。ネット上では「NPJ(News for the People in Japan)」にアップされています。
 今回の違憲判断が画期的なのか、それとも請求は退けている以上、言う必要のない余計な〝蛇足〟なのかは、人により受け止め方は異なるでしょう。わたし自身は、司法の役割をきちんと果たそうとする裁判官の誠意が読み取れる判決との感想を持っています。
 ここでは2点だけ書き記しておきますが、1点目は、航空自衛隊がバグダッドへ多国籍軍の人員・物資を空輸している活動について、判決がバグダッドを「戦闘地域」と認定し、空自の業務の不透明さを鋭く突いていることです。2年前に陸上自衛隊がイラクから撤収して以降、航空自衛隊はもっぱら米軍をはじめとする他国の軍隊の人員・物資をイラクに空輸しています。しかし日本政府はその活動内容の情報公開に極めて消極的です。空輸の回数、積み荷の総重量は公表していますが、武器弾薬の有無、武装兵士の有無については公式にはコメントしません。
 名古屋高裁での審理の経過を逐一承知しているわけではありませんが、一般論として民事訴訟は原告側が立証責任を負います。被告側から反論がなければ、原告側主張が正しいと判断することは自然です。日本政府が、積み荷の内容、武装兵士の有無を含めて情報公開しないことは、重要な後方支援として他国の武力行使と一体とみなされても仕方がない武装兵員の輸送に空自が従事していることをうかがわせる事情になりえると思います。逆に言えば、他国の武力行使とは一線を画した活動であるならば、積み荷の内訳、兵員の武装の有無を情報公開すればいいのです。
 分立している3権のうち、政府が主権者たる国民への情報公開を拒み、議会でもそれを許す議席が多数を占めている中で、残る司法が、それでいいのかと疑問を突き付けた判決。そういう風にわたしは見ています。
 2点目は、原告側の請求は退けながらも、平和的生存権の主張に対しては、単なる基本的精神や理念の表明にとどまらず、憲法の保障する基本的人権の基礎にある基底的権利との判断を明確に示していることです。前文や9条を始めとして日本国憲法は場合により、個々人の人権を守る具体的な根拠になりうる、ということです。判決は、今回の訴訟の原告はそうしたケースには該当しないと判断しました。では、どういったケースが該当するでしょうか。現にイラクに派遣されている自衛隊員たちこそ、その対象の最たる人たちだと思います。戦闘地域に行き、他国の軍隊の武力行使と一体とみなされる業務に従事する自衛隊員たちこそ、日本国民の一人として、憲法9条の名において戦争協力拒否権を行使できる。そう思います。
 この平和的生存権についての名古屋高裁判決の判断部分は読み応えがあり、繰り返し読みました。他のどんな仕事、産業であっても同じでしょう。現憲法がある限り、個人にもまた戦争協力拒否権(日本が戦争にかかわること自体が違憲なのはもちろんですが)は保障されている。わたしはそう思います。

追記(4月18日午前8時半)

 空自の空輸対象には、国連の復興支援物資も含まれており、エントリーで「もっぱら米軍をはじめとする他国の軍隊の人員・物資をイラクに空輸しています」としたのは、事実と異なりました。ただ、その内訳を政府が公式に明らかにしようとしないことには、変わりがありません。
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by news-worker2 | 2008-04-18 03:30 | 憲法