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 毎日新聞の27日付朝刊(東京本社発行、最終版)に訂正とおわびの2つの記事が掲載されました。一つは小泉元首相の引退表明をめぐる飯島勲元秘書官のコメントの引用についての訂正。もう一つは英文サイト「毎日デイリーニューズ」のコラム「WaiWai」問題で、毎日側が記事を無断で利用、翻訳していた出版社、新聞社が32社に上っていたことの新たなおわび(サイトにもアップされています)です。2つの問題自体は異なる事柄ですが、新聞社のジャーナリズムの在り方からは、必ずしも相互に無関係ではないように思えます。
 飯島元秘書官の発言の引用を訂正した記事は、26日付朝刊の政治面(5面)に「存在感 神通力薄れ」「『支持』小池氏も総裁選惨敗」などの見出しとともに記者の署名入りで掲載されました。背景事情として、小泉元首相の政治的影響力が弱まっていたことを指摘する内容のいわゆる「サイド記事」です。関係部分を引用します。
 「小泉氏は(サプライズを生む)魔法のつえをなくしてしまった。次期衆院選で小泉氏が応援しても小泉チルドレンは負けるだろう」
 長く秘書として仕えた飯島勲元首相秘書官は、引退の報を聞くと周辺にこう語った。

 この記事について27日付朝刊の同じく5面に、発言していない言葉が掲載されたとして、飯島氏が毎日新聞社社長、政治部長、記者の3人を名誉棄損、信用棄損、業務妨害の疑いで警視庁に告訴状を提出したことを伝える記事とともに、「訂正」を掲載しています。引用します。
 26日朝刊で、小泉純一郎元首相の飯島勲元秘書官の話として「小泉氏は(サプライズを生む)魔法のつえをなくしてしまった。次期衆院選で小泉氏が応援しても小泉チルドレンが負けるだろう」とあるのは、飯島氏の数日前の話を誤って形で引用したものでした。飯島氏は、小泉元首相引退の報を聞いてこのようなコメントはしていません。この部分を取り消します。

 毎日新聞の訂正記事では、数日前ではあるものの発言自体はあったことになります。しかし、なぜ時期を間違えてしまったのかは定かではありません。気になるのは、発言自体の有無(時期はともかくとして)についての飯島氏の主張は、他の報道によれば必ずしも毎日新聞の説明と一致しないことです。例えば共同通信の記事では「飯島氏は『毎日新聞から(取材の)電話も受けていない。捏造だ』と発言を否定。週明けに損害賠償を請求する訴訟も起こすとしている。」とあります。
 発言は確かにあったが時期を間違えて引用してしまったのか、それとも発言自体が存在していないのか。後者だったとすると、次には毎日新聞が記事で「周辺にこう語った」と記述している「周辺」など毎日新聞の情報源の信ぴょう性が問題になります。飯島氏に対する毎日新聞記者の直接取材はなかったと推察されることも含めて、毎日新聞記者の取材は妥当だったのか、という問題です。
 毎日新聞本紙の取材と記事の掲載のありようという問題は、もう一つのおわび記事のWaiWai問題にも関係してくるのではないかと思います。
 毎日新聞はことし7月20日付朝刊に、WaiWai問題の検証記事を掲載しました(サイトにもアップされています)。その中には次のようなくだりがあります。
 毎日新聞本紙では、記者が書いた原稿はデスクが目を通し、事実関係や表現について筆者に細かく確認を取ったうえで出稿される。さらに、紙面に掲載されるまでには、記事の扱いや見出しを決める部署や校閲部門、当日の編集責任者など何重ものチェックを経る。しかし、「WaiWai」ではこうした綿密なチェックは行われていなかった。原典の雑誌記事との照合も行われず、ほとんどが外国人スタッフの間で完結していた。

 WaiWaiの不適切な記事とは異なり「何重ものチェック」を経ていた本紙の記事で、なぜ今回のような誤報が起きたのかは、つまるところWaiWai問題の再発防止策にも密接にかかわってくる、と言えるのではないでしょうか。毎日新聞社には、WaiWai問題でみせたように、飯島氏の発言引用問題でも誤報の経緯を検証し、読者に説明する真摯な対応を期待しています。

 WaiWai問題は何度かこのブログでも取り上げてきました。過去エントリをまとめておきます。(新着順)。
 外国人記者の「働かされ方」に問題はなかったか~毎日WaiWai問題検証で考えること
 ひとこと:英文毎日コラム問題で毎日新聞が内部調査結果を掲載
 ひとこと:英文毎日問題で7月中旬に調査結果公表
 趣の異なる新聞不祥事~英文毎日の不適切コラム問題
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by news-worker2 | 2008-09-28 02:59 | 新聞・マスメディア
 少し時間がたってしまいましたが、新聞ジャーナリズムをめぐって前例を思い起こすことができないくらい異例で、なおかつ社会の表現の自由を考える上でも重要な問題だと考えていることですので、記録に残す意味も含めて、このエントリを書くことにしました。
 小泉純一郎首相の元で郵政民営化が最大争点になった2005年9月の衆院選の投開票日前日に、東京都内の警視庁職員官舎の集合郵便ポストに共産党の機関紙「しんぶん赤旗」を配布していた厚生労働省の元課長補佐が、住居侵入の現行犯で逮捕されました。住居侵入容疑については不起訴でしたが、国家公務員の政治的行為の制限を定めた国家公務員法に違反するとして、国家公務員法違反罪で起訴されました。東京地裁は9月19日、求刑通り罰金10万円の判決を言い渡しました。
 前例のないほど異例、というのはこの判決の翌20日付け朝刊の新聞各紙の報道ぶりです。東京都内の最終版を調べた限りでは、次のようでした。

【朝日】本記・第2社会面3段見出し
      「元厚労省職員に罰金刑」「東京地裁 赤旗の配布『政治的』」
    被告の記者会見・第2社会面2段見出し
      「『私生活なのに』元職員」
    社説
      「政党紙配布 公務員への刑罰どこまで」
【毎日】本記・社会面準トップ4段見出し
      「元厚労課長補佐 有罪」「赤旗配布に罰金10万円」「東京地裁判決」
    解説・社会面3段見出し
      「34年前の判例 またも踏襲」
    被告側の記者会見・社会面1段見出し
      「『事実見てない』『中味薄っぺら』」「被告ら会見」
【読売】記事の掲載なし
【日経】本記・第2社会面1段見出し(全文12行)
      「官舎に『赤旗』配布で有罪判決」「元厚労省課長補佐」
【産経】本記・第3社会面2段見出し
      「警察官舎に『赤旗』配布」「元厚労省職員に有罪」
【東京】本記・社会面準トップ4段見出し
      「公務員の赤旗配布罰金刑」「東京地裁『政治的な偏向強い』」
    解説・社会面3段見出し
      「最高裁判例ひたすら踏襲」
    被告側が記者会見・社会面1段見出し
      「『司法の職責投げ出した』」「被告が判決批判」

 一面に据えた新聞はないものの、朝日、毎日、東京の3紙は重要なニュースと判断していることがうかがわれ、主要な要素を盛り込んだ本記のほかに、被告側の「不当な判決」との主張を取り上げた記者会見記事などを掲載しました。毎日、東京は署名の解説記事も掲載。朝日は社説で取り上げ、「果たして刑罰を科すほどのことなのか」と判決に疑問を呈しています。
 対して読売が関係記事を掲載しなかったことが目を引きます。いわゆる「ボツ」です。ニュースとして取り上げるまでもない、ごく当たり前の司法判断、ということなのでしょうか。日経もいわゆる「ベタ」でごく短い記事。産経もごくあっさりした記事です。
 一つのニュースをめぐって、新聞の間で扱いの大きさが分かれることは珍しいことではありません。しかし、今回のように憲法上の争点があった判決をめぐって、社説で取り上げる新聞がある一方で、一行も掲載しない新聞もあるというのは、少なくともわたし自身は前例を思い起こすことができません。同じテーマでも新聞各紙を読み比べ、論調の違い(それは「多様な考え方」ということですが)を知ることで、ニュースの理解は深まります。多様な考え方、価値観が社会に担保されることにもなり、わたしは多種多様の新聞が並び立つこと自体に意義があると考えています。その意味では、今回の読売も、記事を掲載しないこと自体がひとつの価値判断のありようなのかもしれませんが、「それにしても」との思いを禁じえません。
 
 有罪判決の根拠法令である国家公務員法102条は次のように「国家公務員の政治的行為の制限」を規定しています。
第102条 職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。
 2 職員は、公選による公職の候補者となることができない。
 3 職員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問、その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。

 さらに人事院規則14-7では、「政治的行為」の一つとして第6項7号で「政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、配布し又はこれらの行為を援助すること。」とあり、また第4項では「法又は規則によって禁止又は制限される職員の政治的行為は(中略)職員が勤務時間外において行う場合においても、適用される」としています。
 被告・弁護側は、赤旗を配布したのは休日で、しかも公務員とは外見的には分からない格好だったとして、無罪を主張していたと伝えられています。日本国憲法は国民の基本的人権として、21条で集会・結社・表現の自由を定めており、公務員も例外ではありません。公務員は社会全体への奉仕者であり、政治的中立性が必要であるにせよ、国家公務員法が公務員の政治的行為を禁止・制限するのは、憲法上の基本的人権との兼ね合いから必要最小限に限るべきでしょう。同じ「勤務時間外」にしても、職場で休憩時間中に政党機関紙を来庁者に配布するようなケースなら、公務員の政治的中立性を疑わせる行為かもしれません。しかし、外見的に公務員とは分からない、つまり公務員の中立性が疑われるわけではないのに刑事罰を科することは、実質的な意味として公務員に限っては一個人としての思想を処罰することにつながりかねず、表現の自由はおろか、思想、良心の自由をすら侵害することになりかねない―。被告・弁護側の無罪主張には、このような危ぐが込められているとわたしは理解しています。
 こうした争点に、今回の東京地裁判決はどこまで踏み込んで判断を示したか。朝日が社説で、毎日や東京が解説で判決に疑問を呈しているのはまさにこの点ですし、被告・弁護側の記者会見記事で判決への批判を紹介しているのも、この事件では「表現の自由」が最大の争点になっていることを重視しての判断からでしょう。新聞はそれ自体、社会に「表現の自由」が担保されていなければ成り立ちえませんし、だからこそ「表現の自由」を守るのが社会的責務でもあると思います。わたしも今回の判決は、新聞にとって重要ニュースとして取り上げるのに足る問題だと考えています。
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by news-worker2 | 2008-09-24 07:29 | 表現の自由
d0140015_0151071.jpg 以前のエントリ「『戦争はいらぬ、やれぬ』~朝日新聞むのたけじさんインタビュー記事」で紹介した元朝日新聞記者でジャーナリストむのたけじさんの一問一答式の聞き書きが岩波新書で刊行されました。聞き手の黒岩さんは、むのさんより43歳年下のノンフィクション・ライター。本書の「まえがきにかえて」によると、1997年に初めてインタビューして以来の交友関係で、むのさんが以前、岩波新書を一冊書くと約束したまま果たせないでいることを知り、聞き書きの形を提案。本書の刊行となりました。
 敗戦から63年がたった今、あの戦争を新聞記者として体験し、戦後は戦争反対を貫いてきたむのさんの本書には、多くの価値があると思います。中でも第2章の「従軍記者としての戦争体験」は、インドネシアに従軍記者として派遣された際に見聞きしたことの証言であり、戦争の実相の記録としても貴重だと思います。ここでむのさんは次のように述べています。
 インドネシアでのいろいろな出来事は、『たいまつ十六年』に書いていますが、今回は、これまで本でも、講演でもあまり言わなかったことを話しましょう。それは、本当の戦争とはどういうものか、ということです。


(続きます)
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by news-worker2 | 2008-09-22 00:30 | 読書
 エントリ「読書:『戦争絶滅へ、人間復活へ―九三歳、ジャーナリストの発言』(むのたけじ 聞き手黒岩比佐子、岩波新書)」に関連した参考情報です。

▽「沖縄戦新聞」
琉球新報ホームページの紹介文より引用
本紙記者が沖縄戦当時にさかのぼり、当時の報道を検証し、新たな事実、貴重な証言などを加味しながら、60年後に再構成した新聞です。言論統制の戦時下では伝えられなかった沖縄戦の全体像を現在の視点で報道しています。

▽ヒロシマ新聞
 むのさんの対談でも触れられていますが、「沖縄戦新聞」に先立つものとして、戦後50年の1995年に広島の中国新聞労働組合が制作した「ヒロシマ新聞」があります。原爆で発行できなかった1945年8月7日付けの紙面を50年後に発行する、との取り組みで、10年後の2005年にはWeb化されました。
 ヒロシマ新聞サイト

▽しんけん平和新聞
 ヒロシマ新聞、沖縄戦新聞に続く取り組みとして、新聞労連は2005年8月に「しんけん平和新聞」創刊号を発行しました。以後、毎年1回、労連の新聞研究活動として発行を続け、ことしは第4号を制作しています。
 新聞労連ホームページの紹介記事

 創刊号、第2号(2006年5月)は、わたしも制作に参加しました。旧ブログ「ニュース・ワーカー」の関連エントリも読んでいただけたら幸いです。
 「しんけん平和新聞」
 「しんけん平和新聞第2号」
 
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by news-worker2 | 2008-09-22 00:04 | 新聞・マスメディア
 上司から聞いて知ったのですが、長野県警が9月からホームページに「ニュース24時」というコーナーを作りました。広報資料として発表した事件事故情報を、独自に一般向けのニュースとして発信しています。平日に1日2回、午前11時と午後4時に更新しています。
 ホームページトップの左上長野県警ニュース24時のバナーをクリックすると、ページに飛びます。
 9月19日のニュースでは、例えばこんな感じです。
無免許運転の男を逮捕(長野南署)
 本日午前10時10分ころ、長野市篠ノ井塩崎地籍において、普通貨物自動車を無免許で運転していた派遣社員の男50歳を交通取締り中の警察官が発見し、道路交通法違反で現行犯逮捕しました。

 9月18日は死亡交通事故やコンビニ強盗の発生など5件、17日は振り込め詐欺対策会議など事件事故情報以外の行事も含めて、15件の〝ニュース〟を掲載しています。コンビニ強盗犯の公開捜査では、指名手配された容疑者の顔写真もアップしています。
 他の警察でも青森県警「事件・事故メモ」千葉県警「最新事件・事故ファイル」など類似の例がありますが、長野県警の場合は自ら「ニュース24時」と掲げているように、その速報性に正直、驚きました。ものによっては、県民の目に触れるのが新聞紙面よりも早いケースがあるかもしれません。新聞ではボツになっている情報もあるでしょう。
 指名手配の容疑者を「犯人」とする一方で、被害者や逮捕した容疑者など当事者は匿名になっているなど、新聞記事とは異なった警察独自の表記になっていますが、ネット社会でのこうした警察独自のニュース発信が、新聞や放送など既存のマスメディアの事件事故報道にどのような影響を与えるのか。少なくとも、報道が警察の発表丸写しにとどまっていては、読者からは一目瞭然です。わたし自身、事件事故報道の社会的な存在意義をあらためて考えているところですし、警察を担当する若い記者たちにも「プロの仕事とは何か」、ぜひ考えてほしいテーマです。
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by news-worker2 | 2008-09-21 09:39 | 新聞・マスメディア
 12日は午後から休暇を取り、船員の労働組合である全日本海員組合(海員組合)の通信員セミナーに講師として参加しました。依頼を受けたテーマは「新聞、雑誌の記事の書き方」。新聞記事の書き方のノウハウのうち、労働組合の機関紙の記事でも参考になりそうなことや、実体験に基づくわたしなりの機関紙論を約3時間にわたって話しました。終了後はセミナー参加者の交流会にも同席させてもらい、わたしにとっても有意義な話を何人もの方から聞かせてもらいました。
 海員組合には、労働組合として際立った特徴があります。日本の既存の労働組合が企業の社員ごとに組織される「企業内組合」であるのに対して、船員一人ひとりの個人加盟を原則としていることです。所属している船会社が異なっていても、「船員」「船乗り」という共通の職能で一つの組合にまとまっています。企業内組合が企業内の労使関係であるのに対して、海員組合は組合員が所属する船会社と個々に団体交渉をし、個々に労働協約を結ぶことになります。それぞれの会社と共通の労働協約を結べば、結果として海員組合に所属する船員は、どこの船に乗っていても一律の労働条件が担保されることになります。形式的にはいわゆる「単位組合(単組)」ということになりますが、実体としては、「船員」という職能の「産業別組合(産別組合)」です。
 これを新聞産業にあてはめて考えると、例えば「新聞記者」を職能と想定すれば、個人加盟の〝新聞記者組合〟がそれぞれの新聞社と共通の労働協約を結ぶことによって、どこの新聞社で働こうが、新聞記者組合の組合員である限り、一定の労働条件が担保されるということになります。セミナー終了後の交流会で「実は、わたしたちのような個人加盟の〝産別〟がもう一つあります。どこだか分かりますか」と聞かれました。答えはプロ野球選手会です。
 産業を問わず、日本の企業で契約社員や派遣社員などの非正規雇用が増大している中、伝統的に正社員で組織されてきた企業内組合による企業内の労使交渉には限界が目立つようになっていると、わたしは考えています。正社員であると、非正規雇用であるとを問わず、同じ産業で働く同じ職能の労働者ならだれでも加盟できる個人加盟の産別組合であれば、今の企業内組合ではできないような幅の広い取り組みも可能になるのではないか、と思います。

 新聞労連委員長だった当時に海員組合とはお付き合いがあり、今回と同じように記事の書き方の研修の講師を務めたこともありました。当時の縁で今回、声を掛けてもらいました。ありがとうございました。

 海員組合のホームページはこちらです。
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by news-worker2 | 2008-09-13 01:16 | 労働運動
 福田首相が突然の退陣を表明した今月1日夜の記者会見で、最後に「首相の発言は他人事のように聞こえる」と質問した記者に「私は自分を客観的に見ることは出来るんです。あなたとは違うんです」と答えたことが、話題になっているようです。
 例えばJ-CASTニュースは「福田首相『あなたとは違う』発言 『流行語大賞候補』とネットで注目」と題して記事をアップしていますし、朝日新聞は3日付夕刊に関連記事を掲載しました。一部を引用します。
 福田首相は1日夜の辞任会見で「会見がひとごとのようだ」と記者から指摘され、「私は自分のことは客観的に見ることができるんです。あなたとは違うんです」と気色ばんだ。この発言を巡る是非は、インターネットでも沸騰。掲示板では関連スレッド(書き込み群)が乱立し、ブログでも無数に取り上げられた。早くも「今年の流行語大賞に」と“期待”する声もある。

 福田首相のこの答弁を肯定的にみるか、否定的にみるかは人それぞれでしょうが、この答弁のもとになった質問をしたのは、在京の大手マスメディアの政治部記者ではありませんでした。質問をした中国新聞東京支社の道面雅量記者の署名記事をここで紹介し、記録にとどめておきたいと思います。

【記者手帳】首相の辞任会見に思う
 「総理の会見は国民には『人ごと』のように聞こえる。この辞任会見も」。一日夜、福田康夫首相の辞任会見で、そんな質問をぶつけた。首相は「私は自分を客観的に見ることができる。あなたとは違う」と気色ばんだ。生意気な質問だという指摘を受けるかもしれないが、あえて聞いておきたかった。
 昨年十月、米民主党のオバマ上院議員が大統領候補指名を争う中、「米国は核兵器のない世界を追求する」と発言した。首相はどう感じたか、夕方の「ぶらさがり会見」で尋ねた。返答は次のようなものだった。
 「そりゃ、そういう世界が実現すれば、それにこしたことはないと思います。まあ、いずれにしてもですね、核兵器を保有する、その競争をするような世界では、あまりよくないと思いますけどね」。被爆国の首相の言葉としては、あまりに物足らなく感じた。
 福田首相は確かに自身の置かれた状況を客観視し、慎重に発言する人だと思う。しかし、それだけでは務まらないのが首相の重責だろう。国民に自身の明確な意思を伝える必要に常に迫られている。辞任会見を聞きながら過去の取材経験がよみがえり、どうしても聞かずにはおれなかった。


*追記(2008年9月6日午前9時)
 タイトルを「福田首相に『あなたとは違うんです』と言わしめた中国新聞記者」から変えました。広島の中国新聞にしても、長崎新聞にしても、〝被爆地の新聞〟で働いていることにこだわり続ける人たちがいることを、新聞労連の専従時代に知りました。道面記者は名実ともに〝被爆地の新聞記者〟だと思います。
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by news-worker2 | 2008-09-04 02:14 | 新聞・マスメディア
 少し時間が経ってしまいましたが、22日付の朝日新聞朝刊総合面(東京本社発行)の「あしたを考える」の欄「夏に語る」に、ジャーナリストむのたけじさんの長文のインタビュー記事が掲載されています。
 93歳のむのさんは1945年8月、新聞が戦争の実相を国民に伝えてこなかったことに責任を感じて朝日新聞社を退社し、その後、郷里の秋田県で週刊新聞「たいまつ」を創刊したことで知られます。略年譜を朝日新聞の記事より引用します。
1945年 8月、「負け戦を勝ち戦とだまして報道した責任をとる」と朝日新聞を退社。40年に報知新聞を経て朝日に入社し、中国特派員や東南アジア特派員などを歴任していた
1948年 郷里の秋田県に戻り、横手市で週刊新聞「たいまつ」を創刊
1978年 780号をもって「たいまつ」休刊
2001年 たいまつ休刊後、農業問題を中心に各地を講演、その活動が評価され農民文化賞を受ける
2003年 秋田県湯沢市で「平和塾」を開講。「塾」は05年まで続いた

 あの戦争を新聞記者として体験し、戦後は商業新聞の外に身を置いて平和のための運動を続けてきた大先輩の数々の指摘は、わたしには厳しい叱咤のようにも、また励ましのようにも読み取れました。
 実は昨年10月、沖縄で開かれたある集会で、むのさんのお話を直接、聞く機会がありました。そのときのもようは後述します。まずは朝日の記事本文の書き出しを引用します。
 転換点は、あるのではなくて、自分でつくるのよ。それは12月8日。始まった日があるから原爆があって終わった日、8月15日がある。原因をつぶさなければ同じことが起きる。なぜあの日があったのか。その日の様子はどうだったのか。誰が仕組んだのか。国民の誰一人として相談受けなかったでしょ。
 朝日新聞も、真珠湾奇襲の大軍事行動を知らなかった。私は東京社会部で浦和(現さいたま市)に住んでいて、朝6時か7時か本社から電報が来たの。全社員に同じ文章。「直ちに出社せよ」だ。うんと寒かったな。
 行ってみたら戦争が始まったって。編集局みんなショック受けちゃって。だれも物言えなかった。異様な沈黙でしたよ。最初は「戦争状態に入った」。しばらくして「真珠湾で軍艦やっつけた」。そういう発表があったけど、万歳なんて喜ぶ馬鹿はいなかったな。通夜みたいな感じでした。何も知らないうちに始まったショックと、これからどうなるかという不安ですよ。
 そしてずるずると300万人の同胞を死なせ、2千万人の中国人を殺した。こんなことがあっていいのかと考えなきゃいかんでしょ。考えたらそうならないための365日の生活の中での戦いが必要だということになるんじゃないですか。

 自身の戦後と、現在の戦争と平和に対する考えについては次のように語っています。
 私は朝日を退社以来、戦争をなくすることに命をかけてきた。平和運動だ、抗議集会だと何千回もやったけど、一度も戦争をたくらむ勢力に有効な打撃を与えられなかった。軍需産業は成長しているんじゃないの。「戦争反対行動に参加した私は良心的だ」という自己満足運動だから。それでも意思表示をしないと権力は「民衆は反対していない」と勝手な判断をするからやめるわけにはいかない。
 でもそれだけじゃダメだ。今は「戦争はいらぬ、やれぬ」の二つの平和運動でないとならない、と怒鳴り声をあげている。
 「いらぬ」というのは、資本主義を否定すること。戦争は国家対国家、デモクラシー対ファッショなどあったが、今、根底にあるのは、人工的に起こす消費。これだけなんだ。作って売ってもうける。そこにある欲望が、戦争に拍車をかけてきた。
 無限の発展はいらない。当たり前の平凡な、モノ・カネ主義でない、腹八部目で我慢する生き方が必要なんです。地球の環境を大事にするとか、スローペースの生き方ですよ。
 そのことに一人一人が目覚め、生活の主人公になること。これが資本主義を否定する人間主義の生き方。戦争のたくらみをやめさせるのはこれなんだ。

 全文で170行以上の長大な記事ですが、従軍記者経験に基づいて「戦争には、弾丸の飛ぶ段階と飛ばない段階がある」と看破していることにも強い印象を受けました。朝日新聞のサイトにはアップされておらず、紙面を手に取るしかないようですが、現在のマスメディアの記者にぜひ読んでほしいと思います。

d0140015_1058151.jpg むのさんは昨年10月、沖縄で開催されたマスメディア労組主催の集会で基調講演をしました。当時、わたしは労働組合専従から復職して1年余の時期で、自身の仕事の意味や働き方を再確認しなければならない、との思いが日増しに強まっていました。むのさんが集会に参加することを聞き、たまらず週末の休みを利用して沖縄に行きました。少し長いのですが、以下に、わたしが当時所属していた労組の新聞研究活動の機関紙に投稿したレポートを再掲します。写真は沖縄の集会での、むのさんです。

 「戦争が始まってしまってから『ヒューマニズム』や『反戦平和』と言ってみても何の役にも立たない。戦争を止めようとするなら、やらせないことしかない」。むのたけじさん(92)は大きな声で切り出した。10月13日(土)、那覇市で開かれた沖縄県マスコミ労働組合協議会主催の2007反戦ティーチイン「戦争への道を止めるために―ジャーナリズムと労組の責任を考える」に参加した。むのさんは1945年8月、自らの戦争責任を明白にして朝日新聞社を退社し、戦後は郷里の秋田県・横手で週刊新聞「たいまつ」を刊行。今も反戦・平和に積極的に発言を続けている。今回は秋田から来訪し、「いい記事を書くために、生活の現場に心を砕き、自分の命を洗いながら、民衆の中に飛び込んでほしい」と後輩のわたしたちをも励ました。むのさんの基調講演を紹介する。
 沖縄マスコミ労協は、沖縄県内の新聞、放送の労働組合で結成。毎年10月を反戦月間と位置づけ、市民参加のティーチインを開催している。新聞労連や民放労連、出版労連が加盟する日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が昨年から共催に名を連ね、平和と民主主義を守るための運動の一環として、広島や長崎とともに、地域のマスコミ共闘組織との連携・共闘の柱と位置づけている。ことしの沖縄の反戦ティーチインには、MICからの30数人を含め、組合員と市民計約200人が参加。14日付の沖縄タイムス、琉球新報両紙も社会面で紹介した。
 むのさんはまず「戦争を食い止めるために、ジャーナリズムと労働組合にも責任があることは明らかだ。しかし、今の日本のジャーナリズムと労組に第3次世界大戦を食い止められるか。今のままでは可能性はゼロだ」と言い切った。続けて「70数年間の経験から言うと、既に第3次大戦は始まってしまった」とも。「戦争を止める」ということについて、要点を3点に要約した。
 第1は、戦争が始まってしまってからでは、ヒューマニズムや反戦・平和と言ってみても何の役にも立たない、戦争を止めるなら「やらせない」ことしかない。第2は、戦場では相手を殺さなければ自分が殺される。この一事のために、全身が縛り付けられ、やがて人間は一個のけだものになってしまう。社会にも同じムードが漂う。武器を手にしていようがいまいが、戦争とは人がけだものになることであり、社会がそれを許すこと。第3は、戦争には2つの段階、すなわち銃砲弾が飛び交う段階と、その以前の段階との2つの段階があること。
 第3の点に関連して、むのさんは戦前戦中の自身の取材経験を話す。日本軍はインドネシア占領後、昭和17年3月に軍政を布告し、司令官が大東亜共栄を宣言した。しかしその宣言は一字一句、太平洋戦争開戦から1年半も前に準備されていたものだった。「戦争を企んでいた連中は、昭和15年のときから、あるいはもっと以前から準備を進めていた。弾が飛ばない前の段階で民衆を組織しないと、戦争は防げない」とむのさんは強調する。治安維持法をはじめとする統制で当時は縛られていたが、今は報道の自由があり、抵抗する権利があり、主権者は国民だと明白に憲法に書かれている。
 「最近は目が不自由になり、情報源はNHKのニュースだけ。しかし、そのNHKニュースだけ聞いていても、もはや第3次大戦は始まっている」。むのさんは、米陸軍第1軍団の神奈川移転計画が持ち上がったときが、その始まりだと指摘する。「第1軍団の任務地域は中国からインドにかけて。その司令部を米本土から現地に近い日本に移すということは、近い将来に中国からインドにかけての地域で米軍が軍事行動を想定しているということだ」。時に仲良く見せながら、戦うか否か、つばぜり合いが続く。これから3年―5年が、戦争を食い止められる最後のチャンスになるだろうと、むのさんは言う。
 では、どうやってその戦争を食い止めるのか。その一つの道として、むのさんはジャーナリストのヒューマニズムを挙げる。戦時中、多くの従軍記者が戦場に赴いたが、どんなに危機に陥っても、自分で銃を手に取ろうとした記者はいなかった。そこに、ヒューマニズムに根ざす近代の情報産業の命があるのではないか、とむのさん。「マスコミが本来のマスコミの姿で真実をはっきり暴き出し、民衆に伝えること。マスコミが本来の役割を果たせば、民衆が戦争を止めるエネルギーを作り出す」。
 「これは今日、ここにいる皆さんへのお願いだ」と、むのさんの声に一段と力がこもった。「何でもいい、明日からの自分を作る目標を持って欲しい。それをエネルギーに、現場の中で、労働者の連帯の中でがんばってほしい」。互いに意見をぶつけ合うことが必要だとも。戦時中は、職場でも2人では会話ができても、3人目が来ると皆口をつぐんだという。「だから観念論はあっても、戦争をやる人間を止められなかった」。
 新聞記者に対しては「生活の現場、人間の関係を密にすることに心を砕け」と訴える。「人間として自分の生活も大事にしながら、読者の中に入って学び、自分の命を洗いながら民衆の中に飛び込んで行くこと」。そうでなければ面白い記事は書けない、と言う。
 「観念論ではダメだ。労組も政党も数を頼るからダメだ。数だけ70万人集まっても、死を覚悟した7人の方が強い」。1人1人が自分を変えながら、人との結びつきを作っていくこと。「観念論を卒業して、新しい人類を作っていくためにがんばろうじゃないか」と、むのさんは講演を締めくくった。

 62年前に日本の敗戦で終わったあの戦争の時代を、新聞人として生きたむのさんの話を聞きながら「戦争で最初に犠牲になるのは真実」「戦争が起きた時点でジャーナリズムは一度敗北している」という有名な2つの言葉をあらためて思い起こした。あの時代、新聞産業は戦争遂行に加担した。むのさんは自らの戦争責任と向き合い新聞社の職場を去ったが、戦後の新聞の労働運動は「2度と戦争のためにペンをとらない、輪転機を回さない」が合言葉になった。あの時代を新聞人として生きた先輩たちの思いはみな一緒だったのだろうと思う。「もはや戦前」とも言われ、むのさんによれば「弾が飛ばない段階として、既に戦争は始まっている」という今、「観念論ではダメだ」というむのさんの言葉が胸に突き刺さる。
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by news-worker2 | 2008-08-24 11:02 | 憲法
 北京五輪が8日、開幕しました。昨夜は私事で開会式のテレビ中継は見ていませんが、けさの新聞各紙はそれぞれに伝えていることと思います。北京五輪の報道は、中国という「大国」をどう伝えるか、という側面も報道する側にとっては大きな課題であり、そこがこれまでの五輪とは大きく異なる点だと思います。よく知られているように、国家が表現の自由を制限している中で、日々、競技結果のほかにも何をどう伝えていくのか。新聞各紙を読み比べれば、各紙ごとのスタンスの違いなども読み取れるのではないでしょうか。
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by news-worker2 | 2008-08-09 08:26 | 新聞・マスメディア
 来春の就職活動(2010年春入社)を予定している人向けのお知らせです。
 新聞、出版、広告の3産業の産業別労働組合(産別)である新聞労連、出版労連、広告労協が合同で主催する「マスコミ就職フォーラム2010」が9月23日、東京・飯田橋の東京しごとセンターで開かれます。
 ことしで5回目ぐらいでしょうか。新聞や出版、広告を将来の仕事の候補に考えている学生の皆さんに、それぞれの仕事を現役の労働組合員がビビッドに語り、職業選択の判断に役立ててもらおうという試みで、わたしも新聞労連委員長のときには運営に参加しました。「こうすれば内定が得られる」というハウツー伝授ではありませんが、企業主催の会社説明会とは違って、実際に現場で働いている組合員が、産業や仕事のいいところも悪いところも話しますので、参考になると思います。
 詳細は「『マスコミ就職フォーラム2010』実施要項」へ。有料です。

 *写真は2005年11月のフォーラムのもようですd0140015_1533675.jpg
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by news-worker2 | 2008-08-04 01:55 | 新聞・マスメディア